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理由(龍之介side)
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「人聞き悪ぃな。生前にキリから、言われてたんだよ。自分に何かあった時は、アイツらを頼むって」
ヘラヘラと笑うユーリに、目が据わる。
「……テメェが頼まれたモンを、人に押しつけてんじゃねェよ」
「しゃーねーだろ。オレとおまえ、どっちの下につくかは自分で決めるって、アキラが言うんだもんよ」
それに、とユーリが、ニヤリと笑う。
「無理くりオレに突っ返してもよかったのに、そうはしなかった。気に入ったんだろ? あいつが」
ジンから何を聞かされているんだか。
「……るせェな。あのプライドの塊みてェなオトコが身体を投げ出してまで欲しがる情報ってのに、興味があっただけだ」
「娼館にいた時に引き離された弟を、探してるって話だぜ」
「ありがちだな。引き離されたのは、最近なのか?」
「や、10年以上は昔のことらしい。キリがアキラ達をその手の娼館から救い出してから、もう5年は経ってる。その間、あちこち当たっちゃみたが、新しい情報は皆無だ」
視線を交わし合い、二人そろって首を振った。
「娼館からの情報は当然何もねェんだろ? ……まるで、雲をつかむような話だな」
面影はあるかもしれないが、成長期を挟んだ10年は人を別人に変える。
「名前だって変わってンだろーし、そもそも、引き取られた先がまともかどうかって話もある」
娼館から闇ルートで取引きされた子供を、飼い主がどう扱うかなど考えたくもない。
最悪、使い捨てられた可能性さえある。
会える可能性の低さを予期できないほど、愚かには見えなかった。
たとえ行く着く先が何もない荒野でも。
ありとあらゆる地獄を背負い、万に一つの望みに賭けて、走り切る覚悟なのだ。
他のすべてを犠牲にできるほどの願いなら。
叶えてやりたいと思うのは、組織のリーダーとして甘すぎるだろうか。
「……弟と娼館の詳しいデータを寄越せ」
「何か当てがあんのかよ?」
「……ねェよ。アイツには言うな。たぶん、何も出てこねェだろうからな」
ハルトやリン、その他情報を抱えていそうな旧知の客だった男に、それとなく尋ねてみるだけだ。
「おまえってドライに見えて、けっこう人情派だよなぁ。いやぁ、感動しちゃったぜ」
「……るせェ」
黙って流せばいいものを、嫌な風に突いてくる。
「ヤツらとはギブアンドテイクの関係なンだろ? ……変に勘ぐってンじゃねェよ」
この分ではアキラとチームの面々の関係に自分と仲間たちを重ねたことも、バレている。
アキラはキリヒトに救われた際、あくまで自分一人残ろうとしたはずだ。
仲間にだけは普通の生活を送らせてくれと、かけ合ったに違いない。
組織は子供の意思を尊重する。
望まぬ子供を戦闘員にしたり、身体を売らせることはけしてない。
アキラと同じ道を行くことを選んだのは、他ならない彼ら自身だったはずで。
だが、自分のせいで修羅の道に引き込んでしまった罪悪感は、永遠に消えない。
単なる友情では片付かない。
ガス抜きが得意な自分でさえ、時折、闇の世界に仲間を引き込んだ重みに耐えきれなくなるのに、アキラはほんの束の間、自分を解き放つことさえ禁じているように見えた。
すべてを己の肩一つで背負おうとしている。
「……今までよく、潰れなかったモンだ」
「我慢強い上に、相当な負けず嫌いなんだろ。おまえが楽にしてやれよ。な? リーダー」
後で感想を聞かせろと鼻の下を伸ばし、下世話なツッコミを入れてくるユーリを蹴り倒すと、ルイが回復期向けに選んだメニューをこなすため、トレーニングルームに急いだ。
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