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問題児(士郎side)
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目指す先には三人を相手にしながらも、怯むどころか冷え切った瞳で次々と相手をのしていく煌牙の姿があった。
実力に差があり過ぎると勝負にさえならないのは、空手の試合でもよくあることだが、まるで大人と子供のケンカである。
煌牙は必要最低限の動きで、大振りな相手の攻撃をかわし、的確に急所を突いていた。
もっと完膚なきまでに痛めつけるような、容赦のない戦い方をするのかと思っていたが、思いの外クレバーなやり方に驚いた。
全員が芝生に沈んだところで、ガードのファーストが割って入ってきた。
「……散れ」
煌牙が外野に向けて、動けない身体を蹴りつけた。
「う…っ」
誰もが呑まれてしまい、動けずにいる中、仕方なく割って入り、倒れた三人が立ち上がるのに手を貸した。
「部屋まで送ってやってくれ。必要なら救護室に連絡を」
近くの生徒たちが我に返ったように頷き、二人一組で怪我人を抱え上げ、連れ去っていく。
野次馬達も、チラチラと怯えた目で煌牙を振り返りながら、散っていった。
「……絡まれたから、思い知らせてやった。文句はねぇだろ?」
「この程度の小競り合いなら、口出しするつもりはない。あいつらも充分、懲りただろ」
それより、汗の量が尋常ではないのが気になった。
見れば、顔色も土気色に近い。
「おまえ、どこか具合が……」
煌牙の瞳が火を噴くのと、
「坊!」
ファーストが割って入ってくるのが、同時だった。
「戻りましょう。煙草なら、部屋でゆっくり吸えばいい」
煌牙はなおも、こちらを睨みつけていたが、やがて黙って踵を返した。
知らず知らずのうちに力が入っていたのか、ドッと疲れが押し寄せた。
刺すような視線に、今なお全身の皮膚細胞がヒリヒリと悲鳴を上げている。
少し考えて、スマートフォンを手に取った。
「翡翠、至急調べてもらいたいことがある。悪いが今すぐ執務室に来てくれるか。オレもすぐに向かう」
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