アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
勧め(ルイside)
-
「精が出るな」
自室を訪ねるなり言うと、ベッドに背もたれ、組んだ脚の太ももの上にPCを乗せて作業していた龍之介が、ブルーライト避けのメガネの向こうから、チラリと冷たい視線を寄越した。
「……手術で忙しい大先生が、何か用かよ?」
苦笑した。
見た目ほど、怒っているわけではない。
単に、ふてくされているだけだ。
……テメェ、オレをないがしろにしやがって、覚えとけよ?
けどまぁ、オマエも忙しいンだろうから、今回だけは大目に見てやる。
そんなところだろう。
「最終診察だ。脱げ」
龍之介がため息をついて、PCを横にどけた。
下着以外の衣服を潔く脱ぎ去り、気持ち筋肉の落ちた身体を惜しげもなくさらす。
ほんの少し前までは、こんなチャンスがあれば、けして逃さなかった。
相手がいなければ、龍之介も気軽に乗ってくれた。
黒曜石の瞳に浮かぶ熱は再奥で達する瞬間でさえ穏やかで、大切にされてはいても愛されていないと、抱かれるたびに深い闇に落とされた。
あの頃の熱狂は、もはやひどく遠い。
少しの痛みを伴い、時折懐かしく蘇ってはくるものの、士郎と幸せになってほしい気持ちの方が、遥かに勝る。
この世の誰より愛しく大切で、尊敬して止まなかった男は、純粋に支えたいリーダーに変わった。
時の経過とは、不思議なものだ。
無数の傷痕の上に新たに刻まれた、激しい戦闘の痕を一つ一つ確かめ、筋肉や腱の損傷がないことを入念に確認していく。
「……ハルとはうまくやってンのか?」
「さんざん邪魔しておきながら、よく言う」
「まァ、そこは大目に見ろよ」
そばに愛しい者がいる。
愛を返してもらえる。
その幸せを知ってしまったら、失うことを想像しただけで、気が狂いそうになる。
尊敬する男に弱みをさらしてもらえるのは、それはそれで悪くない。
頼られている実感が、己の存在意義を照らしてくれる。
「筋肉がパンパンだ。あまり一気に負荷はかけるな」
うつ伏せにして、ストレッチ込みのマッサージを施してやる。
「……ン」
甘く溶けた声は、龍之介の場合、媚薬と同じだ。
いくら特別な想いは消えたと言えど、下腹部がざわめくのはどうしようもない。
スポーツ医学の知識をもとにマッサージを施しなから、必死にハルトの顔を脳裏に思い描いた。
「……ソコ、もっとくれよ……」
「……っ」
見れば、うつ伏せに横たわったまま、視線だけを寄越す龍之介が、意地の悪い笑みを浮かべていた。
情けなくテントを張ったものを、グッとつかまれて、悲鳴を上げそうになる。
「……ハルとはヤッてンのかよ?」
「だからっ、そういう濡れた声を出すな……!」
「……オレの身体触って勃ったって聞いたら、ハルはどう思うだろうなァ?」
こいつ、完全に面白がってやがる。
「ったく、やってられるか!」
思い切り尻を叩いて、ベッドから飛び降りた。
「……っ痛ェな。で、全快でいいンだよな?」
ついさっきまでフェロモンを垂れ流しまくっていたとは思えない、冷静に測るような視線に、ため息をつく。
この切り替えの早さには、毎度感心させられる。
こちらも惚けてなどいられない。
診察以外にも、話しておくべきことは山とあった。
「サブリーダーに医療ブースへの機器導入の話をした。よほど高額でない限り、予算を割いてくれるそうだ」
「オマエの働きがイイからだろ」
昔から、お世辞の類は口にしない男だ。
素直にその言葉が嬉しかった。
「相談がてら、一つ提案してきた」
乗るか蹴るかは龍之介次第だが、考えうる限り、あらゆる方面に最適な方法は、これしかないように思えた。
「おまえ、ユーリさんと一緒にミッションに出ろ。ジンさんに夢中なあの人なら、適任だろ」
龍之介がわずかに目を見開き、眉を上げた。
「……そりゃ、考えつかなかった。そう言われてみりゃ、そーか」
悪くねェなと、龍之介がうなる。
「……乗った」
好戦的な瞳が輝きを増した。
「向こうの了解は取れてる。だが、リーダーとサブの同時参加だ。当然、あまり危険度の高すぎるミッションは避けろよ」
一応は提案してみたが、
「知るか。万が一ン時は、ジンの阿呆がいンだろ」
案の定の答えが返ってくる。
早くもミッションをあれこれと選び始める龍之介にため息をつき、とりあえずの役割は果たしたと、早々に部屋を後にしたところで、スマートフォンの着信に気づき、青い目をわずかに見開いた。
自らアドレスを渡しはしたが、滅多なことではかけてこないだろうと思っていただけに、何かあったのかとの危機感が募る。
早急に折り返そうかとも思ったが、内容によっては人払が必要になることもありえると考え、ひとまずは自室へと急ぐことにした。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
29 / 297