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切り札(煌牙side)
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サードがトレイをソファーテーブルの上に置いた。
毒味した後、ベッドに運んでくる。
子供の頃から、何度も殺されかけた。
毒に、拉致監禁、恨みの果ての殺傷。
物心ついて以来、毒味された物以外、口にしたことはない。
あの卵粥に、毒が仕込まれていたら?
後から気づいて、ゾッとした。
自殺行為に等しい。
なぜそんなバカなことをしたのか、わからない。
わからないまま、運ばれてくる雑炊に手を伸ばす自分は、より一層、不可解だ。
あの男も、なぜこんなことをする?
取り入りたいのか?
……無駄なことを。
もはや昔のような力は、自分にはない。
それどころか、死ぬのなら周りの人間に気づかれずに逝けと、こんな僻地に流された。
カラカラに乾いた心に、わずかな温もりが染み渡る。
不意に込み上げたものに、スプーンを握りしめ、思い切り床に叩きつけた。
握った拳が震えた。
心臓の鼓動が乱れた。
死の足音が聞こえる。
どこまで逃げても追ってくる、死神のようだ。
「……坊」
壊れかけた命をつなぐ。
その意味さえ見出せないままに。
再び差し出されたスプーンを奪い、唸り声を上げながら、残りの雑炊を掻き込んだ。
空になった土鍋を、アゴでしゃくった。
「……坊、しますか?」
拒まないでいると、サードが歩み寄ってくる。
下肢をくつろげられ、根元を支えながら咥えられた。
「……っ」
口淫は、されてみるとこの上なく楽だった。
自ら動かなくていい分、身体の負担が少なくて済む。
仕込まれているだけあって、目をつむっていれば、下手な女より遥かにいい。
飢えは満たされないが、欲求だけは解消された。
ここのところ体調の悪化に反して、ひどく昂ぶることが多くなった。
死にかけた獣が子孫を残そうと、手当たり次第に交尾する様が脳裏に浮かぶ。
滑稽で、笑えた。
無理やり深く呑み込ませると、喉奥を犯す。
やがて、冷えた心とは裏腹の射精感が込み上げてきた。
「……っ、ぅ……っ」
幾千幾億の命の源が無為に放たれていくのを、冷めたままの瞳で見守った。
サードの身体を蹴り飛ばして、再びベッドに潜り込む。
たかがこの程度で、ひどく身体が重かった。
そのうち、こんなことさえできなくなるのか思うと、より深い闇の底に引きずり込まれていく気がした。
男としての機能が終わる時、それでもまだ、自分は生きていたいと思うのだろうか。
……バカバカしい。
去勢された獣に、生きる価値などありはしない。
その時は、潔く死ぬか。
密かに持ち出したマイクロチップを思う。
あの情報さえあれば、父親が命より大事にしてきた組織を傾けることもできる。
到底気は晴れないが、ほんの少し溜飲を下げることくらいはできるだろう。
死なばもろともだと、襲い来る気怠い眠気に身を任せた。
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