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大義名分(龍之介side)
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「……ハル、リンにつないでくれ」
組織内からの通信は、ハッキングを防ぐため、すべてセキュリティー部門を通して暗号化することになっていた。
少し待たされたが、無事リンを捕まえたようだ。
「よう。頼みがあンだけど、聞いてくれるよな」
『断定かよ』
苦笑する気配が伝わってきたが、腹を立てた様子はない。
「アンタは昔から、オレに甘い」
『まぁな。処女奪っちまった責任もあるし?』
「……いつまで言ってンだか」
まぁ、必要以上に恩に着てくれると言うのなら、利用させてもらうまでだ。
「組織の人間を一人、表の世界で売り出すのに協力してくれ。ルックスは文句ナシに極上だ。まともに顔さらすのはNGだが、雰囲気だけでもかなりイイ線いけると思う」
『何のために?』
「生き別れの弟探しに必要でな」
『へぇ。そりゃまた、断りにくいな。顔出しNGの理由は?』
「すでに客がついてる。口封じが面倒な、上客ばっかだ」
『売るのは、大して難しくもねーよ』
大手芸能事務所を傘下に抱える世界的大企業のお坊ちゃんは、いとも容易く、そう答えた。
『それよか問題なのは、肝心の弟君が気づくかどーかだろ』
もとより極端に勝率の低い賭けだ。
「誰も手出してきねェ高みまで登り詰めるようなら、ヤツの勝ちだ。顔出しも、いずれは解禁してやるさ」
『できなけりゃ、それまでって?』
甘いんだか厳しいんだか、わからないな、とリンが笑う。
『けど、面白そうだ。乗った。傘下の芸能事務所に口利いてやるよ。とりあえず写真やデモテープを用意して、送ってくれ。せいぜいクオリティーの高いのを頼むぜ?』
通信が切れた。
アキラの弟探しと資金集め、士郎と過ごす時間の確保。
一石三鳥とは、まさにこのことだ。
虎の命を助けてやること自体に異存はないが、だからといって士郎を独り占めさせてやるほど、心が広いわけでもない。
大義名分はできた。
大手を振って桜華に乗り込んでやる。
まずはアキラの説得から始めるとしよう。
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