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光(煌牙side)
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遮光カーテンの隙間から、淡い太陽の光が差し込んでくる。
以前は朝が大嫌いだった。
明け方が一番危険だと、医者から言われ続けたせいだ。
このポンコツの身体は、今日もまともに動くのか。
新しい一日がやってくるのは、けして当たり前ではないことを、望まないながらに知った。
この世に温もりと呼べるものなど何一つ存在しない。
永遠に変わらないと思っていた。
最近、その世界がほんの少しだけ色を変えた。
初日以外、毎朝決まった時間に運ばれてくる土鍋の温もりに、ほんのわずかだが癒されている自分がいる。
滑稽な話だ。
人とは命令や利己心、あるいは恐怖から、嫌々動くものだと思っていた。
あの男の行動は、どうにも理解しがたい。
……時間だ。
隣室からガードが入ってくるのを待つ。
だが、今朝に限ってノックの音がなかった。
「……ちっ、冷めるだろーが」
声を張り上げるには、体力を使う。
ちょうどトイレにも立ちたいと思っていたため、拳を握りながらゆっくりと身体を起こした。
隣室のドアを蹴り倒そうとしたが、漏れ聞こえてくる声に、足を止めた。
夜は防犯上の理由から、隣室とのドアを10センチほど開けて過ごしていた。
今日、一番近い部屋で眠っているのは、確かサードのはずだ。
いったい誰と会話している?
「……はい、特に問題はありません。体調はよくなさそうですが、一応は安定してます」
家への定期連絡か。
「嫉妬なんて、そんな……。どこで誰に仕えていようと、僕があなたのものであることに変わりはないのに」
不意にサードの声が、甘さを帯びる。
「ええ、あなたより大切な人なんて、いるはずがない。……僕もあなたにお会いしたいです」
嫌な予感が脳裏を過った。
音もなく近づいて、背後から電話を奪い取る。
受話器から聞こえてくる声に、沸騰しそうなほどの怒りと吐き気を覚えた。
「……死にやがれ」
電話線ごと引きちぎり、床に叩きつけた。
脳裏を駆け巡るのは、誰より深く憎悪する男が抱いた相手に、情けなく咥えられて果てた、己の惨めな姿だ。
「ぅげ……ぇ…」
吐こうとしても、胃液しか出てこない。
「坊……っ!?」
支えようとするサードを、渾身の力で振り払った。
ドアを目指した。
「走っちゃダメだ……!」
知ったことか。
もう、嫌だ。
我慢の果てに、何がある?
……何もありはしない。
こんなくだらない命など、終わってしまえばいい。
勢いよく開けたドアの向こうで、勢いよく何かとぶつかった。
「どうした?」
士郎が驚いた顔で立っていた。
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