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反発(士郎side)
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役員棟の一階にある、捕虜を収監するスペースを少しいじり、煌牙の寝室にあてた。
「ここなら24時間、何があってもすぐに駆けつけてやれる。一般生徒の立ち入りは、本来禁止されているエリアだ。一人で出歩くのは控えてくれ」
「……監視される上に、部屋から出るな? 体よく監禁しといて、よく言うぜ」
「……それが人に物を頼む態度かよ?」
「あぁ……!?」
ジェイのつぶやきに、煌牙の目が据わる。
「ジェイ、興奮させるな」
「……すんません」
「煌牙、おまえも悪い」
「……るせぇな」
「執刀医は明日着く予定だ。いくつか追加の検査をして、投薬治療を開始、状態が落ち着いているようなら、なるべく早い段階で切りたいと言ってる」
「……あと数日の命ってわけか」
自虐的に、煌牙が笑う。
その青ざめた頬を、克己が軽く叩いた。
「そんなこと言って、現実になったらどうするの?」
「あぁ……? テメェらはその方が都合がいいんじゃねーか。……偽善者ぶってんじゃねーぞ」
底冷えのする視線に、場の空気が凍りつく。
「姫、行こうぜ」
ジェイが翡翠と克己の肩を抱いた。
「こいつマジで、性格ネジ曲がってやがる」
「男のくせに、姫かよ。……笑えんな。どーせ男に媚びて、腰振って生きてきたんだろーが」
まずいと思った時にはすでに、遅かった。
「……ひーちゃんに手ぇ出そうとした人が、男のくせにとか言うんだ? それこそ、笑えるんだけど」
にーっこり。
完全に、臨戦態勢だ。
「……克己」
「シロちゃんは、黙ってて!」
ピシャリと言い放ち、ベッドサイドの椅子に座り込む。
「君は自分のこと、男としてずいぶんと買ってるみたいだけど、君の生きてきた世界じゃ人に当たり散らすしか能がないお子様を、男らしいって持ち上げてくれるんだ?」
「……てめぇ」
煌牙の手が、克己の首に巻きついた。
頸動脈を、押し込んでいく。
慌てた達也が、煌牙の手を振りほどいて、克己を腕の中に包み込んだ。
克己は盛大にむせたが、相変わらず煌牙から目をそらさなかった。
「……今君の周りに人がいないのは、なにも病気のせいじゃない。君が人の気持ちを踏みにじってきたから、周りの人達も同じようにしただけだ」
克己の迫力に、誰も口を挟めなかった。
「強さは確かに人を惹きつけるけど、人にやさしくできない男なんて、最低だよ。生きる価値もない」
「……克己、もうよせ」
言っていることは正しいが、死にかけている人間に生きる価値がないというのは、さすがに言葉が過ぎた。
「この通り、シロちゃんはやさしいから、君みたいなヤツでも助けようとする。でも、それに甘えてやりたい放題するなら、僕は君を許さないから」
席を立つ克己に従い、自分以外の全員が部屋を出て行った。
「……行けよ。テメェも腹ん中は、あいつらと同じだろーが」
煌牙は舌打ちすると布団に包まり、こちらに完全に背中を向けた。
もはや何を言っても振り返らない背中にため息をつき、克己達の後を追って部屋を後を出た。
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