アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
逆襲(士郎side)
-
「……るせぇ」
腕の中の煌牙がハスキーな声をさらにかすれさせながら毒づき、肘を入れてきた。
グッと腹筋に力を入れて、耐えた。
もはや慣れたものだ。
「……すまない。確認だけさせてくれ」
画面を見て、息を呑む。
この前、一方的に通話を打ち切られてからしばらくは、謝罪の電話を待ったりもしたが、何の音沙汰もないまま、よりによって今かと、頭を抱えたくなった。
……声を聞きたい。
元気でやっているのかだけでも、確認したかった。
だが、いさかいの原因である虎と同じベッドにいるなどと知れた日には、克己の言葉ではないが、本当に血の雨が降りかねない。
もう少し落ち着いた状況で話すから、今夜のところは許せと、電話が鳴り止むのを待っていた時だった。
不意に手が伸びてきて、スマートフォンを奪われた。
「おい……っ」
奪い返そうとしたのも虚しく、煌牙がパネルを操作して、通話を始めてしまう。
「……るせぇ、安眠妨害だ」
『……テメェは、誰だ?』
一瞬、甘い声の響きに驚いた頭をした煌牙だが、こちらを見ると、ニヤリと底意地の悪い笑みを浮かべた。
「……テメェのカレシなら、横にいるぜ。オレと寝るって、うるさくてかなわねぇ」
気怠そうな吐息は、まるでさっきまで添い寝以上のことをしていましたとでも言いたげで、慌ててスマートフォンを奪い返す。
「おいっ、誤解するなよ……っ」
『……オレの知らねェとこで、ずいぶんと楽しそうなコトしてンじゃねェか。……なァ?」
皆まで言わせず、龍之介が笑う。
低く、底なしに甘い声が、鼓膜から脳の奥深くまでもを震わせていく。
背筋が細かく泡立った。
吐息が乱れるのを必死にこらえながら、言った。
「……ただの、添い寝だ。……っ!?」
煌牙の足先が下腹部の膨らみを意地悪く、えぐってくる。
「よせ……っ」
『……色っぽい声、聞かせやがって。到底、ただの添い寝って風には聞こえねェなァ?』
闇を支配する声。
『なァ……、オマエは誰のモンだ?』
「……っ」
おまえのものに決まってるだろう……っ。
言いたくても言えない言葉が、脳裏を駆け巡る。
必死に煌牙の足をガードしても、脳を揺らす龍之介の声は消えてくれない。
昂ぶる身体に、震えが走る。
『……もう、限界だろ』
吐息だけですべてを察したかのように、龍之介が笑う。
他の男に触られてイッても、昂りの原因はあくまで自分のせいだと、この男はすべてわかっている。
「は…ぁ……っ」
悔しくて、その何倍も安堵した。
もう、保たない……。
声を聞きたい。
キツく目を閉じながら、龍之介を想う。
『どーした? ……もっとエロい声、出せンだろ?」
「……っ」
『……オレを熱くできたら、そうだな、ご褒美をやるよ』
もう何も考えられなくなる。
龍之介以外、見えなくなる。
ただ、欲しくて。
「龍……」
愛しい男の名を呼んだ。
『……もっとだ」
「……龍」
『……ヤベェな、今のはさすがに、勃った』
苦笑混じりのため息に、カアッと首筋が火を噴いた。
『つーわけで、お遊びはココまでだ』
「な……っ」
てっきりこのまま、電話越しに登り詰めるものだとばかり思っていた。
『……ソイツにイキ顔さらしやがったら、今度こそタダじゃおかねェからな』
さっきまでの甘さが嘘のような、不機嫌な声。
『明日、そっちに行く用事ができた。その前に一滴でも出しやがったら……わかってンだろうな?』
呆然としている間に、通話は切れた。
「……抜くなら、外でやれよ」
すっかり興味を無くしたとばかりに、煌牙が布団を被る。
ズクン、ズクン、と痛みを訴えるほどに勃ち上がったものを、いったいどうしろというのか。
このままではとても眠れない。
だからといって勝手に処理すれば、ただでさえ苛立っている龍之介が何をしでかすか、考えるのも恐ろしい。
とにかく身体だけでも休めようとベッドに入ったものの、さすがに勃ち上がった身体で抱きしめるわけにもいかないだろう。
これでは立派なセクハラだ。
仕方なく、背を向けた。
モゾモゾと、煌牙が落ち着かなげに動く。
「さすがに今夜は、別々に眠った方がよさそうだな」
煌牙の身体に負担をかけるのは、本意ではない。
「テメェのせいじゃねぇ……。アイツの声が……、くそ……っ」
その時はじめて、煌牙も昂っているのだと気がついた。
「……あの声は犯罪に近い。別に、おまえがおかしいわけじゃない」
だから安心しろと言いたかったのだが、煌牙は不機嫌に黙り込んだまま、何も答えなかった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
46 / 297