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帰還(士郎side)
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ヘリから龍之介とルイ、さらにもう一人、見知らぬ男が降りてきた。
「……よぅ」
肩を抱かれた。
電話越しでさえ時間の感覚を容易に失わせる声は、生だとさらに破壊力が増す。
「……昨日はずいぶんと煽ってくれたじゃねェか」
肩を抱いていた腕がスルリと降りていき、腰骨を強くつかむんだ。
「……っ」
身体が痺れて足がもつれそうになるのを、必死にこらえた。
「寝不足か? ……それとも、アソビが過ぎたか」
まだ午前中の早い時間のはずなのに、濃密な甘い闇の底に、なす術もなく引きずり込まれていく気分になる。
「……少し離れろ」
「……何だそりゃ。もっと……つってるようにしか聞こえねェなァ」
「……っ」
この男は本当に意地が悪い。
睨みつけると、ニヤリと笑われた。
滴るような色気を感じさせる笑い方に、これ以上は本当に反応してしまうと、龍之介の胸を押し返した時、不意に背後から刺すような視線を感じた。
振り返れば、目を見張るような美しい男が立っていた。
目が合うと、軽く会釈される。
笑顔はないが、無表情の方が凄みが増すタイプだ。
龍之介が気づいたように、振り返る。
「アキラだ。で、こっちが、士郎な」
「……彼が例の?」
「やり取り見てりゃ、わかンだろ」
龍之介が見せつけるように、首筋に鼻先を埋めてくる。
「……止めろ」
甘えられるのは嬉しいし、自分とて触れたいのは山々だが、さすがに人前で度の過ぎたスキンシップは、羞恥が勝る。
だが、
「……もっと本気で拒んでみろよ」
その方が燃えるとばかりに、龍之介が笑う。
「オマエの嫌だは、もっとって意味だしなァ?」
「バカ言うな……!」
「そもそも、カラダが拒んでねェし。……わかるモンだぜ? 触った瞬間の震え一つで、どれほど飢えてンのかも、熱の上がり具合もな」
「……っ」
尻の肉を揉まれ、布ごしの狭間に指が滑り込んでくる。
もう限界だと、負けを承知で腕の中から逃げ出した。
「いい加減にしろ……!」
龍之介が肩をすくめた。
「……まァ数週間じゃ、この程度か」
嬲るような声と視線に、ヒヤリとした。
「……人目無視して強請らせるには、どンだけ放置すりゃいいンだか」
たった一言、欲しいと言わせるために、半年も一年も放っておかれたのでは、本当に気が狂う。
……会える時は、会いにこい。
第二ボタン一つが、かろうじて止まっているだけのシャツの裾をつかんで、視線で語る。
わずかに驚いた顔をした龍之介が、喉の奥で笑った。
「……まァ、甘えンのはそれなりに上手くなったか」
キュッと胸の奥が痛んだ。
やっぱりダメだ、龍之介が足りない。
そう思った瞬間、かすめるようなキスが、風のように行き過ぎた。
そのまま、足の止まりかけた自分を置いて、さっさとランドローバーに乗り込んでしまう。
首筋を真っ紅に染め、唇に腕を当てた自分の横で、アキラがつぶやくように言った。
「……あんな顔は、はじめて見た」
その視線は龍之介だけを真っ直ぐ追っていた。
ドクンと嫌な感じに心臓が跳ねた。
……そんな目で見るな。
その瞳に宿る仲間以上の熱と切なさが、もはや恐怖に近い感情を連れてくる。
「一応はオレもいるんだが。……目に入ってないみたいだな」
見れば最後に残ったルイが、苦笑しながら隣に立っていた。
「あ……、いや、すまない」
そんなに龍之介で一杯一杯になっていただろうかと、居たたまれない気分になる。
「久しぶりだな。役員棟の住み心地はどうだ?」
「……悪くはないな」
ルイに肩を抱かれて、歩き出す。
「あんたはともかく、あいつは何しに戻ってきたんだ?」
「自分に会うためとは、考えないのかよ?」
ルイが、からかうように聞いてくる。
「会いたいだけなら意地悪く、不意打ちで戻ってくるだろう。……時期的にも早過ぎる」
何か理由があるはずだ。
「詳しくは聞いてないが、あいつ絡みだっていう話だぜ?」
ルイが前を歩くアキラの背中を、アゴでしゃくった。
「……彼は?」
「リーダー直属の隠密部隊らしい」
直属の……。
「あの通りの美形だ、気になるのもわからなくはない。だが、あまり心配し過ぎるな」
不安を見抜かれたようで、慌てて表情を引き締めた。
「……遅ェぞ」
さっさと乗れと、龍之介がボヤく。
張り上げなくても不思議と遠くまで通る声。
龍之介が帰ってきたのだと実感して、改めてじんわり胸が熱くなった。
共に過ごせる時間は限られているのだ、よけいなことを考えるのはよそうと、愛しい男の元へと足を速めた。
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