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より高みへ(士郎side)
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わらわらと全員が集まってくる。
龍之介一人がわずかに離れた場所に陣取ると、怒りに冷え切った目で、遠巻きに事の推移を見守っていた。
アキラは所在なさげに、龍之介とみんなの中間辺りに立っている。
青白いオーラを隠さない龍之介に、困惑しているようだ。
その肩を抱き、強引に椅子に座らせた。
「ギスギスして、悪いな。だが、やる時はやる男だ」
心配するなと言えば、アキラが唇を噛み締める。
物言いが上からだったかと、反省した。
「君にとっても、悪くない話のはずだ。とりあえずは、聞いてくれ」
構想を話すと、案の定、非難の声が相次いだ。
「龍之介さんを映して、消す? そんなん、不自然過ぎっしょ!」
「恋人同士って設定からして、どうなわけ? そりゃ龍ちゃんだって、不機嫌にもなるよ」
「普通に撮るんじゃダメなんですか……?」
「……その作業、地味に面倒くさい。シロさんのお願いでも、正直、気が進まないな」
ジェイ、克己、達也、翡翠が強く、あるいは控え目に意見を述べた。
遠慮なく自己主張できるのは、オープンな関係の証でもある。
その上で議論を重ね、意見を擦り合わせていく。
賛同を募る。
意識を共有していく。
スリリングで心踊る作業だ。
「今回のPVをただのプロモーションと位置づけるのなら、おまえ達の言うように雰囲気を切り取るだけでいいのかもしれない。だが、物事は始めが肝心だ」
言いながら、全員を見渡した。
「どうしても深く記憶に刻み込まれるような映像を残したい。伝説の幕開けとして相応しい、誰もが息を呑んで見惚れるような」
アキラを見れば、みんなの視線がアキラに集中した。
脳裏には未だ、先刻の撮影の余韻が残っているはずだ。
「ただ普通に撮ってなお際立つ素材を、自分達の手で伝説にまで押し上げる。……どうだ、燃えるだろう?」
ブルッと、克己の身体が震えた。
ジェイが何かを決意するかのように、拳を握り締める。
達也の瞳が未来を見つめるかのように、深く果てしなく澄み渡っていく。
翡翠が深く吐息した。
はぁ……、とジェイが天を仰ぐ。
「士郎さんって、こんなグイグイくんだ? つーか、男前過ぎて参る」
「何、顔を紅くしてるんだよ」
翡翠が冷たい視線を送る。
「だいたい、シロさんがカッコいいのは、前からだし」
「言い出したら、きかないからね、シロちゃんは。おまけに、わりとゴーイン」
克己が肩をすくめて、クスッと笑った。
「勝負事で負けるのは、好きじゃないだけだ」
共犯者の笑みを交わし合う。
「やりますか」
「やっちゃいますか」
「うおーっ、なぁんか、燃えてきたっ」
「アキラ君も、いいよね?」
克己の念押しに、
「……あんたは、いいのか?」
アキラがためらうように、聞いてきた。
吸い込まれそうな瞳だ。
想いをつなぐことに不慣れで、ひどく孤高な。
この寒さを意識さえしないままに震える魂を、せめて撮影の間だけでも温めてやりたい。
仮初めの愛情でも、染み渡れば明日への活力になる。
何より、アキラはもっと輝けるはずだ。
「撮影中は本物の恋人だと思って接してくれ」
これは自分とアキラ、自分と龍之介、龍之介とアキラそれぞれの勝負でもあった。
手加減や遠慮はいらない。
「奪えるものなら、奪っていけ」
驚くアキラの視線を振り切って、
「話を進めるぞ」
ホワイトボードを軽く叩いた。
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