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残像(士郎side)
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見ていられなくて、カットの声をかけるなり、駆け寄った。
魂の一部を失ったような顔で立ち尽くす龍之介の頭に、タオルをかけて、周囲の視線を遮断した。
抱き寄せると、珍しくも素直に身を預けてくる。
本気で一つの恋を失ったのだと、傍目にもはっきりとわかった。
ショックや悔しさより、癒してやりたい気持ちの方が先に立つ。
今までもきっと、この獣は傷つくたびにこうして息を潜め、衝撃が和らぐのを待っていたのだろう。
出会った頃。
恋は片時の狩りを楽しむものだと、余裕の態度で皮肉気に笑っていたものだ。
どうせ長く続くはずもない。
抗えない快感で絡め取りながら、同時に堕ちてくるなと冷たく拒む。
本当は人一倍、愛情深いくせに。
バカな男だ……。
愛しくてたまらなかった。
「……おかえり、龍之介」
大丈夫だと、抱きしめた。
誰が去っても、何を失っても、自分だけはこうしてそばにいる。
だから安心して、好き勝手やればいい。
……はぁ。
深い吐息が、密やかに響く。
肩の重みがなくなり、龍之介が髪をかき上げた。
「……クソッ、まだ残ってやがる」
胸クソ悪いと、己のシャツの胸の辺りをつかんだ。
アキラの残像が、悲恋の欠片が、消えていかないと。
不意に、闘争心に火がついた。
「消してやる」
「……どうやって?」
ハッ、と皮肉気に笑う顔さえ、どこか弱々しく映る。
「いいから、来い!」
翡翠にビデオカメラを押しつけると、強引に龍之介の手を引いて、射撃場を後にした。
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