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甘やかす(士郎side)
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「……ンな、食ってくれって顔されると、ガマンできなくなンだろ」
欲情に濡れた声が浴室の壁に反響して、耳を犯す。
脳が震え、あらゆる場所が濡れていくのがわかった。
「……声だけで、イッちまいそうだな」
「……っ」
とにかくこの声を封じなければと、無我夢中で耳を塞ぐと、いつの間に近づいてきたのか、唇を甘く吸われてしまう。
「…ふ…ぅ…ぁ……」
奪うようないつもの激しさはどこへやら、舌を絡める動きもとろけるようにやさしく、淡雪のように儚くて、切なさばかりが募った。
足りない……。
気づけばすがりついて、求めていた。
吐息で笑われ、蜜を流し込まれる。
いつもより熱い舌が口内をやわやわと刺激しながら、じれったい快感を煽ってくる。
もう、どうなってもいいと崩れる落ちる寸前で、離れていってしまう。
「……髪、洗ってくれンだろ?」
すっかり溶けた身体が、ブルリと震えた。
前も奥も欲しがりすぎて、どうにかなりそうなのに、言い出したのはおまえだと言われれば、耐えるしかなく。
「……出るぞ」
腹につきそうなほど勃ち上がったものを隠すのは、もはや困難だった。
もし次の機会があるのなら、自分は着衣で臨もうと固く心に誓いながら、龍之介を椅子に座らせ、無香料のシャンプーボトルを手に取った。
「……それ、好きなヤツと入れ替えていいンだぜ?」
「……このままでいい」
いつ龍之介が戻ってきてもいいように、無香料のものを使い続けているのは、自分の意志だ。
微笑みの気配が香った。
声に出さなくても、伝わる想いがある。
くすぐったいような、すべてが報われた気分でシャンプーを泡立てると、龍之介の濡れた髪に触れた。
「……ン…」
地肌に指先が当たると、龍之介が気持ちよさそうに吐息した。
曇り止めを塗った鏡に、うっとりと目を閉じた表情が映る。
孤高な百獣の王が自分だけに懐き、身を任せている優越感に思わず小さく微笑むと、気配を察した龍之介が片目だけを開けて、鏡越しにこちらを見た。
斜めな視線と泡泡な頭の落差がおかしくて、今度こそ声に出して笑うと、チッと悔しげに舌打ちされる。
「……後で覚えてろよ?」
低く、物騒なことをつぶやかれ、苦笑した。
「……お手柔らかに頼む」
「……そんなンで満足できンのかよ?」
「……さぁな」
激しくされても、ゆったり抱かれても、きっと同じだけ満たされて、同じだけ物足りない。
龍之介となら、こうして飢えている時間さえもが快感に変わる。
届きそうで届かない切なさも、もどかしさも。
崩れ落ちる砂糖菓子のように甘く儚く、胸が詰まるほどに愛しくてたまらない。
頭皮のツボにグッと力を込めると、妖しく傾きかけていた空気感が緩み、吐息がこぼれた。
「……はァ、気持ちィ……。何かよ、前ン時よか、スゴくねェか?」
「練習したからな」
「……誰で?」
子供の頃はよく幼馴染である克己の髪を洗ってやったが、当時は取り立ててツボを意識するようなことはなかった。
前に龍之介の髪を洗ってやった際、あまりに気持ちよさそうな顔をするものだから、もっと……と欲が沸いた。
インターネットなどで調べ、自分の髪を洗う時に試すのを繰り返すうちに、首を含め、幾つか痺れるほど気持ちのいいツボを発見した。
力加減に好みはあるが、龍之介の反応を見ていれば、ちょうどいい場所を探るのは難しくない。
「誰だと思う?」
嫉妬されるのが心地よくて、からかえば、
「……あー、やっぱ言うな」
龍之介の考えが読めて、苦笑した。
「あいつには、してないぞ」
「……どうだかな」
スネる龍之介は予想外にかわいくて、参る。
あやすようにやさしく頭皮を撫でてやると、再びまとう空気が緩むのも、愛しくてたまらなかった。
「克己にだって、最近はしていない」
おまえだけだと言下に伝えれば、
「……ったく、どンだけ甘やかしてくれンだか」
呆れたように、ため息をつく。
「おまえが望むだけ、甘やかしてやるさ」
「……なら、いい加減、ベッドに行きてェ」
腕を捕まれて、熱が上がる。
「……そうだな。そろそろ流すか」
互いに限界が近かった。
ゆっくり身体を洗い合うのは、また次の機会にしよう。
シャワーの湯の温度を調節して、龍之介に目を閉じるように声をかけた。
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