アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
譲れないもの(士郎side)
-
今度は自分の番だと言わんばかりにのしかかってきた龍之介の発情した瞳の熱に、負けそうになる。
抑えてはいるが、心なしか息も荒い。
余裕があるように見えて、欲しがる気持ちは同じなのだと思うと、愛しさが募った。
自ら腕を伸ばしかけて、ハッとした。
「今、何時だ!?」
甘く濃密な空気を吹き飛ばす声に、
「……ンだよ」
真夜中だが、それがどうしたと、龍之介が目をすがめた。
「……! 悪いが、行かないといけないところがある」
添い寝をすると、無理に約束させたのは自分だ。
今、煌牙を放り出すわけにはいかなかった。
龍之介の身体を押し返すと、腕を取られ、シーツにはりつけにされた。
「……オレより優先する用事ってのは、いったい何だ?」
昂ったものを押しつけながら、龍之介が問う。
燃え上がる熱と苛立ちを抑えるためだろう、逆に冷えて映る青白い瞳に、許しを乞うた。
「……頼むから、放してくれ」
「理由を言え」
わがままだと、わかっている。
久々に会えたこの夜に、別々のベッドで眠るなど許されるはずもないかと、ため息をついた。
逆の立場なら、我慢などできない。
だが、煌牙との間に一度壊れた関係を修復する時間は、もはや残されていなかった。
どちらを取るかと言われたら、今の自分には煌牙しか選べないのだと、覚悟を決めて言った。
「煌牙と、毎晩添い寝すると……約束した」
カッと龍之介の瞳が火を噴いた。
「本当に単なる添い寝だが、言い訳できない状況なのはわかってる。……許してくれとは言わない」
ただ、行かせて欲しい。
痛いほどの視線を受け止めた。
身体が凍りつきそうだ。
指先がかすかに震えた。
もう未来永劫許さないと、見捨てられたら。
自分はきっと、身が引きちぎられるほどに後悔するのだろう。
永遠にも思える沈黙の後、
「……好きにしろ」
龍之介の身体が退いた。
わずかな安堵と、それを遥かに上回る喪失感に、目の前が暗くなる。
終わりだと告げられた気がした。
まるで熱のない氷にでもなったかのようだ。
寒くて震えが止まらない。
それでも必死に力を込めて、起き上がった。
力の入らない脚で立ち上がり、壁伝いに歩く。
投げ出された服を拾い、着込んだ。
背中に焼けつくような視線を感じた。
すべてを投げ出して謝り、すがりつきたい気持ちを必死にこらえ、ドアの前に立つ。
一歩出ると、背後でドアの閉じる音がした。
鼻の奥がツン……と痛み、慌てて首を振った。
深く息を吐いて、壁伝いにのろのろと歩き出す。
その後は、ただ前だけを見据え、煌牙の部屋を目指し、歩き続けた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
83 / 297