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自分だけの光(煌牙side)
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「オレもオマエも、言ってみりゃ世の中のはぐれ者だ。……誰にも理解なンざされねェ、されたくねェって、肩肘張って生きてる」
龍之介がパソコンを打つ手を止めて、傍の士郎の髪を撫でた。
その愛しげな仕草に、視線を吸い寄せられた。
「……コイツはオレらと世界をつなぐ、架け橋みてェなモンだ」
まるで長年熟成された琥珀色のブランデーが、グラスの中でたゆたうように、笑った。
甘く香り立つ濃密な闇に絡め取られまいと、必死にもがいた。
「……単なるお節介ヤローだろーがっ」
違いねェ、と龍之介が肩をすくめた。
「……けど、とことん根性の座った、お節介ヤローだ。地獄までつき合う覚悟で、乗り込んできやがる」
「だから、るせぇっつってんだろっ」
「……ンな、興奮すンな。揺れてンのがバレバレだ」
「……っ」
「それによ、オマエがブッ壊してェと思ってる世界も、案外捨てたモンじゃねェよ。……たぶんな」
「てめぇは、何だ……?」
どう足掻いても、敵う気がしない。
この闇のように底知れない空気感、静かな威圧感は、いったい何だ?
「……さァな。オレにもよくわかんねェ。けどこんなンでも、ツブれそうなガキ救う闇の組織のドンらしいぜ? ……笑えンだろ」
不思議と嘘や冗談だとは思わなかった。
すべてを面白おかしく笑う男の、不意に垣間見えた孤独な闇に、呑まれそうになる。
龍之介が自分をかまうのは、潰れそうなガキの一人だと認識されているからか。
……端から、立ち位置が違う。
敵うはずもない。
少なくとも、今は。
「……おい、こいつは、てめぇの……」
「やんねェぞ」
みなまで言わせず、睨みつけられた。
さっきまでの煙に巻くような態度ではなく、ギラつく本気の瞳だった。
「コイツだけは、やんねェ。……コイツにたどり着くまでに、どンだけ苦労したと思ってる?」
「……知るか」
「……手ェ出したら、ブッ殺す」
「だから、いらねーし」
龍之介は熱くなった自分を律するように髪をかき上げ、ため息をついた。
長い沈黙が落ちた。
不思議と苦痛ではなかった。
深い闇の底で、同じように傷だらけの魂と出会った。
その男が独りではなかったことに、ひどく救われた気がした。
「……テメェだって、探しゃどっかにいンだろ」
言われ、想像してみた。
目を凝らしてみても、闇しか見えない。
初めて差し込んだ、かすかな光は、すでに他人の手の中にあった。
それでもどこかに、自分だけの光はあるのだろうか?
と、その時、スクリーンをのぞき込んでいた龍之介が、おっ、と楽しげな声を上げた。
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