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痛み(士郎side)
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「……大惨事だな」
互いに夢中になり過ぎた。
理性が戻ってくると、いたたまれなさばかりが先に立つ。
「……待ってろ」
龍之介が立ち上がり、部屋を出て行った。
手の平で覆うとか、せめて……口で受け止めるとか。
いくらでも痕跡を消す方法はあったはずなのに、あの時、あれ以外は選べなかった。
どこまで自分は龍之介に夢中なのだろうと、呆然とした時。
「……臭ぇ」
耳元で低く響いたハスキーボイスに、ギョッとした。
「……いつから起きてた?」
「……最初っからに決まってんだろ。つーか、あいつはわかってやってたぜ?」
「……っ」
拳を握り締めて、怒りと羞恥に震えた。
「……あんな男の、どこがいい?」
「……何?」
嫌悪感というよりは、どこか苦さの漂う口調に、思わず振り返ろうとして、そんなことのできる状態ではないことを思い出す。
「……聞いて、どうする」
ドカッと背中を蹴りつけられた。
「……いいから、答えろ」
口より手足が先に出る性格はどうにかならないものかと、ため息をつく。
「……最初は、正直、嫌悪感しかなかった」
克己を巡り、一方的にライバル視さえしていたものだ。
踏み込まれて、足掻いて。
底なし沼に沈むように、何も見えなくなった。
毒のように甘い声に理性をかき乱され、受け止め切れないほどの快感に啼かされ続け、気づいた時にはもはや、遠く戻れない場所に導かれていた。
だが堕ちた理由は別にある。
「……痛みを知ったから、だろうな」
完璧な男なら、独りで生きていける。
傷ついた獣に寄り添い、孤独を癒せるのは自分しかいないと気づいた時。
克己を失った心の隙間が、龍之介を求めた。
「……なら」
煌牙が何かを言いかけた時、再びドアが開いて、龍之介が戻ってきた。
チッと煌牙が舌打ちをした。
「……デバガメは、もう止めか?」
「……っせぇな。朝っぱらから気色悪ぃこと、してんじゃねーよ」
「いいオカズができて、よかったなァ、……オイ」
「……てめぇはマジ、ムカつくな!」
睨み合う2匹の獣はさて置き、龍之介の手の中から濡れタオルを奪うと、ゴシゴシと勢いよく顔を拭いた。
顔も髪も、ひどくベトついた。
やはり本格的に風呂に入らなければダメらしい。
そろりと足を下ろすと腰は痛んだが、何とか一人で歩けそうでホッとした。
「風呂に入って、飯を作ってくる」
「……士郎」
改めて名前を呼ばれ、嫌な予感に震えた。
「悪ィな。……時間だ」
疲れ果てた身体の何倍も、胸が痛んだ。
「……そうか」
理性を総動員して、顔を上げた。
「気をつけて帰れよ」
これ以上この場にいたら醜態をさらしてしまいそうで、肩を叩いて龍之介の横を通り過ぎようとした時だった。
「……バカが」
奪うように抱きしめられ、強引な舌に唇を割り開かれた。
「……ん…っ、ふ…ぁ…っ」
わざと盛大に音を立てながら、口内を嬲られる。
外でやれとばかりに飛んできた枕を、龍之介が笑いながら、叩き落とした。
その間も、抱きしめる腕の力は緩まない。
結局は、膝が崩れるまで容赦なく口内を犯された。
座り込み、紅く腫れ上がった口元を握った拳で覆いながら、荒い呼吸を繰り返す。
やり過ぎだと睨みつけたところで、腰が立たないのでは、迫力の欠片もなかった。
「……じゃあな」
龍之介が笑いながら髪を撫で、去っていく。
その笑顔を脳裏に刻みつけながら、次に会うまで無事でいれくれと、何度味わっても慣れることのない痛みの中で、そればかりを切に願った。
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