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頼み(士郎side)
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『今話しても?』
数時間後、翡翠から連絡が入った。
「もちろんだ」
空手の鍛錬で流した汗を拭きながら、木陰を選び、大木の幹にもたれた。
『結論から言うと、やろうと思う』
「……そうか」
目を閉じて、安堵を噛み締めた。
「助かる。おまえにばかり負担をかけて、すまないな」
『それなんだけど、保険をかけたい。僕だけでもやれるとは思うけど、ハルトさんと連携できれば、成功率は格段に上がる』
目の覚める思いがした。
「すぐに連絡を取ってみる!」
『連絡なら、龍之介さんに入れて欲しい。こういう重要事項は、トップダウンが基本だ』
もっともだと苦笑した。
自分には過分なほど、できた後輩だ。
礼を言って、通話を切った。
すぐに龍之介を呼び出した。
『……どうした?』
「……っ」
毒のように甘い声。
急速に昨夜の熱が蘇る。
『ンな濡れた声出しやがって、足りねェなら、夜かけろ。……声でイカしてやるよ』
濃密な甘い闇に、あやうく絡め取られそうになりながら、屈辱と得体の知れない熱に震えた。
「違う……っ」
反論しながら、強い否定は肯定と同じだと、唇を噛む。
濃密な夜を過ごせば過ごすほど、龍之介の不在が色濃く浮かび上がるのはなぜなのか。
どうしようもないほど恋しく、どうしようもないほど欲しい……。
密やかに熱い息を吐き出すと、やっとのことでハルトの力を借りたいと伝えた。
『……ハルかよ』
あからさまに不機嫌な声さえ、嬉しく感じた。
もっと自分を欲しがれ、他など見るなと言われているようで、目眩がした。
『で、何に手を貸せって?』
火照った首筋を押さえながら、慌てて気分を引き締めた。
端的に事の経緯を話せば、長い沈黙が落ちた。
「かなり危険なのは承知している。それでも、手を伸ばして届くところにいる命くらいは助けたい。おまえが前に言った言葉だ」
その覚悟に、打たれた。
一生敵わないと思ったことを、覚えている。
やがて、クッと小さく、龍之介が笑った。
『……ずいぶん、人をおだてるのが上手くなったじゃねェか』
「命を取り合うように関わりたい……本気でそんなことを言うバカと、つき合っているからな。自然、鍛えられる」
『愛し合いたい、だろ……?』
あえて曖昧にした部分を、濡れた声で淫らに言い換える性格の悪さに、舌打ちした。
下肢が疼く。
底なしの絶倫さ加減も移るものなのかと、バカなことを考えながら、
「頼んだぞ」
念押しして、早々に通話を打ち切った。
濃密な夜を思わせる毒のように甘い声の余韻に身体が痺れて、動かなかった。
この先どれくらいになるかも知れない会えない日々を思い、深くやるせないため息をついた。
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