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別離(ドルフside)
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アキラが戻ってきた。
リーダーの帰還に、わらわらと駆け寄るチームの面々の背後で、一人冷たい目でアキラを見つめていた。
何かが変わった……?
纏う空気が違う。
もとより飛び抜けて綺麗な男ではあったが、内に向かい凝縮する硬質なダイヤのようだった輝きが、今や太陽のフレアのように、その身体から揺らめき立ち上っている。
自信……そして、ある種の開き直りとも取れる覚悟とが見て取れた。
何があったかはわからない。
だが、いたずらに己を責めるのを止めたアキラの瞳には、今や目を瞠らんばかりの強い光が煌めいていた。
もとより、自分の手に負えるタマではない。
わかっていたから、圧力をかけた。
強い意志やプライドが、内に内に向くように。
何重もの鍵をかけ、己の手の中で踊るように仕向けたのだ。
来るべき時が来たのだと知る。
このままここにいても、もはや以前のような関係ではいられないだろう。
抱かせろと言えば、身体は好きにさせてもらえるかもしれないが、支配できない関係に興味など持てない。
再び手に入れるには、新たな関係を築く必要があった。
「おい、ドルフ! どこ行くんだよ?」
気づいたカレンが訝しげに聞いてくる。
つられて皆も、こちらを向いた。
アキラは何も問わなかった。
聡い男だと笑った。
こちらがどう出るのかも、すでに読んでいるのだろう。
「穴蔵で遊ぶのにも、いい加減飽きた。いつでも好きな時に出てっていい約束だったよな」
「はぁ!?」
「今まで世話になった」
真面目くさった顔で、アキラが言った。
いったいどんな世話だと、吹き出しそうになる。
まったく、どれだけ綺麗な魂をしているんだか。
そんな風だから汚したくなるんだと、ヒラヒラと後ろ手に手を振った。
「またな。裏の連絡手段は、断たないでおいてやるよ」
困ったら、縋ってこい。
言い置いて、部屋を出た。
サブリーダーのユーリに連絡し、出ていくと告げると、5分待てと通信が切れた。
『いいぞ。そのまま、地上に向かえ。セキュリティーゲートで当面の金を受け取れるように手配しといた。まぁ、退職金みてーなもんだ。おまえ名義のセキュリティーカードとナンバーは、その時点で破棄されっから、二度と中には入れねぇ。それでいいんだよな?』
出てくヤツに金をくれるとは変わった組織だと思いながら、ああ、と短く答えた。
留まるのも出て行くのも自由だと聞いてはいたが、あまりにもあっさりし過ぎていて、拍子抜けした。
居心地も取り立てて悪くなかっただけに、少しばかり後ろ髪を引かれもしたが、退屈していたのもまた確かで、あらゆる意味でそろそろ潮時だったのだろう。
『元気でやれよ。万が一戻ってくる時は厳重に身辺調査させてもらうから、あんまハデにやらかすなよ?』
戻ってこいとも来るなとも取れる意味深な忠告を最後に、通信が途切れた。
まったく、重ね重ねおかしな組織だ。
さてと。
とりあえずは隠密時代の客でも頼るとするか。
ゲートを抜けた先の森にたたずむと、大きく伸びをしながら、まばゆい太陽に目を細めた。
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