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安堵(龍之介side)
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共に駆けるのなら、独りで立つのは、もはや必須条件と言っていい。
恋人という括りに甘え、寄りかかってくるようでは、どれほど燃え上がった恋だろうが、一瞬で冷める。
ずっと、恐れていたことがあった。
この誇り高い男も、いつかはこの関係に疲れ、弱さを見せることもあるだろう。
その時、士郎に対する想いもまた変化してしまうのかと。
自分自身、士郎の前で何度も崩れかけては、引き上げられておきながら、身勝手過ぎて嘲笑ってしまうが、この想いが冷めてしまったら?
心を偽り、色褪せゆく関係にすがるのか、いっそすべてを切り捨て、再び孤独の荒野に帰るのか。
罰せられたいと、すがるような瞳で媚薬に狂う士郎を前に、己の心の奥深くをじっと静かに見つめていた。
この姿を……さらされた弱さを、跳ね除けて見せろと思いはしても、不思議なほど懸念していた失望とは無縁だった。
士郎と別れて以来、熾火が爆ぜるように疼く身体に苦笑した。
溶け合うほどに抱き合った快感の余韻は、今もまだ完全には消え去ることなく、地中深くを流れるマグマのようにひっそりと息づいている。
再度、士郎が去ることを想像してみた。
他の誰かを腕に抱く……あるいは組み敷かれる士郎を想像しただけで、この世界ごと破壊できそうなほどの、凶悪で禍々しい怒りが込み上げてくる。
もはや愛しさとさえ呼べぬほどの、醜く歪んだ独占欲に、ゾッとした。
同時にひどく安堵した。
何も変わりはしない……。
この男が多少弱ったところで、落ちたままでいるわけもないと信じている。
何より、もはや引き返せない場所まで来てしまった。
深く……果てしなく、囚われている。
心を……魂を。
こんな自分に、これほどまでに愛されて。
憐れな男だと、媚薬に溺れ、秘部をさらして善がる士郎を、スクリーン越しにじっと見つめていた。
思い切り抱きしめて、互いの境界線が見えなくなるほど深く溶け合いたい……。
タガが外れそうな自分を、そっと諌めた。
誰より誇り高い男がここまで崩れるのもまた、自分の前だけなのだと思えば、悲しいほどの愛しさが込み上げてくる。
壊しては護り、犯しては慰め、愛しては孤独に突き落としながら、最期までこの男と共にいたい。
それでいいンだよな、と視線で問えば、士郎がわずかにだが微笑んだ気がした。
突き上げる愛しさが、胸の中で荒れ狂う。
触れられないのがひどく、もどかしかった。
ふと、ある物の存在を思い出し、苦笑した。
こんな提案をしたら、殴られるくらいでは済まないかもしれない。
だが、使うのなら。
媚薬で正確な判断を失くした今以外にはありえなかった。
手の届く場所にいるのなら、たとえそれが偽りの自分自身であろうと、己が士郎を犯すなど、到底許容し難かったが。
思えば奥で得る快感を知ってしばらくは、自分も狂ったように男が欲しかった。
思うように抱いてやれない今、代わりを立てておくのも、恋人の役目と言えなくもない。
さて、どう反応するか。
長い独り寝の夜の友に、どうせならしっかりと目に焼きつけておこう。
『……おい、さっきの扉の奥を探ってみろ。面白ェモンが転がってるはずだ』
スクリーンの向こうの士郎に、ニヤリと意地悪く笑いかけた。
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