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追い詰める(龍之介side)
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銃弾が顔のすぐ横をかすめていく。
怒号が響き、幾多の足音が迫ってきた。
ここにいる敵を殲滅させるのは容易いが、さすがにこちらも全面戦争は望んでいない。
卑怯な手で手元に縛りつけている子供達と、その家族の解放。
全面降伏の言質。
それらを確実に実行に移させるための、弱みの掌握。
その程度でいい。
ふすまを開け放つのと同時に、銃を構える指先を狙った。
ナイフのように細い三日月からこぼれ落ちる、かすかな月明かりの中、長身の男の持つ銃が弾け飛ぶ。
鳩尾を蹴り上げて床に転がった男の顔を確かめるなり、懐から出した小型の箱と共に、男の身体をワイヤーで素早く一本杉の柱に縛り上げた。
「暴れンな。……まだ、死にたくねェだろ?」
このワイヤーは、人の首をも容易に落とす
暴れれば、無駄に血を見るだけだ。
「……さてと」
すっと息を吸い、声を張り上げた。
「動くな。テメェらのボスは、爆弾抱かせて、縛り上げてる!」
部屋の敷居まで来たところで、敵方の動きがピタリと止まった。
こちらは総勢5名だが、全身武装し、自動小銃を手にしている。
一人は煌牙の父親に狙いを定め、他の3人はフォーメーションを組みながら、油断なく外に銃を向けていた。
一目でプロだとわかる動きに、敵方の動揺が伝わってきた。
撃ち合ったところで勝負になどならないと悟ったのだろう。
「野郎……っ」
わかってはいても、屈辱と使命感にかられ、逆上する者が出る。
勢いのままに突っ込んできた輩の脚を、容赦なく撃ち抜いた。
ヒギャ、と声にならない声を上げて、男が床を転げ回る。
「わかったろ? コイツはオモチャじゃねェ。歯向かうなら撃つ。……おとなしく言うコトをきいといた方が身のためだ」
男達の内の一人から、殺気が色濃く立ち上る。
「……おっと、下手なこた、すンなよ? オレら全員倒してもムダだ。仲間が遠隔で起爆装置、握ってっからなァ」
く……っ、と駆けつけてきた男が唇を噛んだ。
最後の最後まで足掻く姿勢は、褒めてやってもいい。
だが、勝負はドンを押さえたところですでに詰んでいる。
「コッチの要求を言うぞ。まずは囲ってるガキ全員の解放。その家族共々だ。特に相模雪夜の所有権を息子に譲るって言質が欲しい。でねェとテメェんトコのワガママな坊っちゃんがヘソ曲げて、オレのオンナに当たり散らして、大惨事だ」
まるで小さな子供に言い聞かせるように説くと、一見して極道とわかる男の額に、ピキッと青筋が浮かんだ。
片や、柱に縛り上げたドンが、クッと小さく笑った。
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