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おまえでなければ(龍之介side)
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『龍之介か……!?』
作戦の成否が気になって、眠らずに起きていたのだろう。
疲労した声が緊張の中で跳ねた。
抱き潰した翌朝のそれにも似た、どこか気怠な表情に、機械的に発散したはずの身体が一気に熱を持つ。
「……なァ。オレとそっくりな張り型の具合は、どうだった?」
さらに乱してみたい欲にかられ、淫らに声を濡らして問えば、スクリーンの向こうの士郎が息を呑む。
つかの間、視線が揺れたが、やがて怒りに燃えた瞳がキッと見つめ返してきた。
『くだらないことを言ってないで、さっさと結論を言え……っ』
怒りに染まる切れ長の目もとに唇を落とし、紅く色づく首筋に思うまま喰らいつきたい……。
飢えて乾いた唇を、無意識に舐めて濡らした。
『……っ、いい加減にしろ……っ』
見ていられないと言いたげに、士郎が目もとを手の平で覆った。
求めて止まない相手が己の一挙一動に揺さぶられ、ストイックな殻を脱ぎ捨てて欲情する様に、どうしようもなく心が踊る。
「感想と交換だっつってンだろ。……言えよ、しっかりナカでイケたのか? ……オマエんナカがより欲しがるのは、実物と模型のどっちだろうなァ……?」
『知るか……っ』
「……なら、こっちも答える義理はねェな。切るぞ」
突き放せば、絶望的な表情をした。
『待て……っ』
羞恥とプライドを天秤にかけ、ギリギリの場所で踏み止まろうとする様がたまらなかった。
やがて揺らめき立ち昇るのは、自己犠牲に裏打ちされた、悲壮なまでの使命感と覚悟だ。
打たれるたびに顔を上げ、ドロだらけになりながらも必死に喰らいついてくる。
自分のためではなく、あくまで人のために、切り立った高い崖から飛ぼうとする。
あらゆる欲にまみれた自分とは違う清廉な魂が、やけに鮮やかで眩しく見えた。
……これだから飽きない。
何度でも、奈落の底に突き落としたくなる。
そうしてボロボロになった身体を抱きしめるのは、自分以外にはありえないのだと、魂の奥深くに刻み込み、永遠に逃れることのできない枷を嵌めてしまいたい……。
『……イッたのは、薬のせいだ。しよせん模型は模型だろう。実物を超えることなどありえない』
覚悟を決めたのか、隠すものなどないと言いたげに、士郎が潔く胸の内を語る。
『代わりを与えておけば、オレを縛れるとでも思ったか? あんなものに犯させて満足するなんて、おまえらしくもない』
こちらが心の内をさらすのだ、おまえも見せろと言わんばかりに、喉元に刃を突きつけてくる。
「……バカが。足りねェに決まってンだろ」
抑えつけていた想いが溢れ、かすれた声に、苛立ちが滲む。
「……オマエを満たせンのは、オレだけだ」
『……ああ。だが、おまえを満たせるのもまた、オレしかいない。違うか?』
しばし命を取り合うように、見つめ合った。
熱い想いが胸の奥を貫いていく。
「……たりめェだろ。端から、そう言ってる」
唸るように言えば、密やかな微笑みが返ってきた。
『……おまえの形を忘れない程度に、会いにこい』
アレを使うと、よけいにおまえが欲しくなる……。
「……っ」
斜めに送られた視線の艶っぽさに、情けなくも言葉を失った。
してやったりと、士郎が声を上げて笑った。
やり込められた敗北感の中、約束通り、しぶしぶ事の顛末を吐けば、
「今回は本当に助かった」
早く煌牙に伝えてやりたいからと、一方的に途切れた通信に、不完全燃焼の熱ばかりが身体中を駆け巡る。
「くっそ、会いてェな……っ」
ベッドに仰向けに倒れ込み、胸元の布をつかんだ。
戦いに夢中になっている時には思い出しもしないくせに、ふとした瞬間に感じる喪失感は、日増しに勢いを増すばかりだ。
さりとて士郎には士郎の、これと定めた道がある。
やり切ったと、すっきりした顔で自分のもとを訪れる日を、ただひたすらに待つと決めた。
だが、何もおとなしく待つ必要はないはずだ。
次はどうやって会うチャンスを作るかと思い巡らせながら、疲れに負けて、つかの間の眠りに落ちた。
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