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決意(煌牙side)
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「おいっ、龍之介がやったぞ!」
士郎が珍しくも興奮しながら、息急き切って駆けつけてきた。
「雪夜もその家族も解放された! 自由になれるんだ!」
「……ざけんな…っ」
今さら解放されたところで、この十数年の地獄が消え去るわけではない。
あいつがオレを許すはずがない……。
だったら、同じことだ。
「勝手に自己完結するな! 彼がこれまで、どんな想いで生きてきたと思う……?」
そんなのは、聞くまでもない。
実の親を恨み、すべての元凶であるドンや自分を憎み、ただ復讐だけを糧に、血反吐を吐きながら生きてきたのだろう。
「……そうか」
不意に絶望という名の荒野に、わずかな希望が芽吹いた。
いっそ、殺されてやればいい。
どうせ生きる価値もない、棺桶に首まで浸かった身体だ。
今さら自分を殺ったところで虚しいだけかもしれないが、気持ちにケリをつけ、前に進むわずかな原動力くらいにはなれるかもしれない。
欠片ほどでも雪夜の役に立てるのなら。
こんなガラクタのような命でも、少しは意味があるものに思えた。
「……雪夜を呼べ」
今夜すべてを清算しよう。
これでやっと、ゆっくり眠れる。
どこかホッとしている自分の弱さを、嘲笑った。
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