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再会(煌牙side)
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鎮静剤を打たれた雪夜を、士郎が横抱きにして運んできた。
運び入れたソファチェアに、意識がないままの雪夜を座らせた。
「……出てけ」
お節介焼きの士郎が、クソ主治医のルイを振り返る。
ルイが渋々といった体で頷いた。
「映像で中の様子は逐一確認させてもらう。何かあったらすぐにでも飛び込むからな」
……勝手にすればいい。
どんなに弱っていようが、雪夜はあの親父が育て上げた鉄砲玉だ。
生きる意志のない獣を仕損じるほど、落ちぶれてはいないだろう。
素手で急所をつく術など、いくらでもある。
それもできないほど弱っていた、その時は。
自ら喉を掻き切ってやるまでだ。
静かな時が流れた。
10年以上会っていなかったはずなのに、不思議と懐かしさが込み上げた。
サードとして会っていた時には、顔などろくに見てさえいなかった。
咥えさせた時でさえ、周辺視野でぼんやり認識し、これなら絵的に許容できると判断したに過ぎない。
いざ、まじまじと見つめてみれば、相変わらず色が白く、少女のように愛らしく綺麗な顔をしていた。
ひっそりと森の片隅で咲く、白く群生した可憐な小花にも似た、はにかむような控えめな笑顔を見たくて、夢中で庭中を連れ回したことを覚えている。
あの頃は何の疑いもなく、少女だと信じていた。
嫁に来いだなんてバカげた言葉を、本気で口にしたこともある。
おまえはオレのものだ。
……誰にもやらない。
得意げに宣言すると、照れながらも嬉しそうに目を輝かせる様子が、かわいくて……かわいくて。
ベッドを抜け出して、そっと青白い頬に触れた。
親指で撫でた唇は栄養不良のせいか、わずかにだがカサついていた。
この唇に遠い昔、たった一度だけ触れたことがある。
濡れたように輝く、月明かりの下で。
口づけには永遠を誓う意味があるのだと言った、下っ端がいた。
心臓が飛び出すほどに緊張した。
池に映る月を眺めながら、絡めた指をキュッと握り、震える吐息を感じながら、頬を寄せ……。
初恋だったのだと、今ならばわかる。
最期に、おまえに会えてよかった。
そっと唇を触れ合わせると、一つ深く息を吸い、パン……と勢いよく頬を張った。
「起きろ」
「ん……」
薄いまぶたがスローモーションのようにゆっくり持ち上がるのを、最期の審判が下るのを待つ罪人の気分で見つめていた。
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