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熱が見せた幻(士郎side)
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珍しく、熱を出して寝込んだ。
龍之介に抱き潰されて腰が立たないことはあっても、こうして寝込むのは珍しい。
暑いのか寒いのかわからない震えに悩まされながら、荒い呼吸を繰り返す。
見舞いに来ていた生徒会役員の面々も、早々に引き上げた。
目を閉じていると、時間や空間の感覚が曖昧になる。
自分一人が世界から取り残されてしまったかのような、寂しさと虚しさがないまぜになった疎外感に、身がすくんだ。
早くよくならなくてはという焦りと、どうにも力の入らない身体の落差に、どんどん気分が落ち込んでいく。
萎縮した心が最後の最後にすがるのは、どこで何をやってるのかさえ定かではない、毒のように甘い声をした、闇色の髪と瞳のつれない男だ。
「龍之介……」
会いたいと言えば我慢がきかなくなるから、普段は努めて忘れたように過ごしていたが、熱のせいで理性が上手く働かないのを言い訳に、繰り返し愛しい男の名を呼んだ。
「……龍…」
眠りに落ちては目覚め、また寝入るのを繰り返すうちに、次第に夢うつつの境界線が曖昧になる。
夢の中の自分は相変わらず素直ではないが、時折、目を覆うほど淫らに龍之介を求めた。
夢は願望の現れだと言うが、ならば自分はすっかり龍之介に狂わされてしまったのだと思った。
『オイ……、寝込んでンだって?』
「……っ」
いったい、いつから見ていたんだと、夢の中の自分は怒りと混乱、沸き上がる喜びを噛み殺す。
『つれェンだろ? ……ムリすンな』
いつもは熱い龍之介の手が、ヒヤリと冷たくて、気持ちよかった。
「ん……」
『バカが……、色っぽい声出してンじゃねェよ』
毒のように甘い声が、ため息の中で濡れていく。
熱で火照る身体が、より一層の熱を孕み、汗が流れ落ちてた。
身じろぎをして、シーツと擦れる肌が甘く痛むのは、風邪のせいなのか、それとも……。
ひどく、もどかしかった。
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