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とばっちり(翡翠side)
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「また、あの男は……」
敷地内のセキュリティーを統括するシステムに、アラームが鳴り響く。
ターゲットは士郎の寝室である。
この時点で十中八九、相手は知れていたが、システムを高度なレベルで維持するためには例外は作らないのが鉄則だ。
嫌々ながらシステムに侵入すれば、熱で我を失った士郎が、夢の中で龍之介の名を呼んでいた。
桜華のシステムは、もともと龍之介がハルトに作らせたものだ。
特定のキーワードに反応してルートを開くコードを打ち込むことくらい、訳もない。
キーワードはおそらく、龍之介の名前で間違いないだろう。
ストイックを絵に描いたような士郎だが、やはり龍之介の不在がこたえているのか、時折、切なげに恋人の名を呼ぶ。
そして、そういう時は大抵、身体の方も龍之介を欲している時で。
密室に青少年が一人きり、無理もない話なのだが……。
忠告はしてみたものの、
『バラしたら……わかってンな?』
逆に毒のように甘い声で、釘を刺された。
あの声で本気で落としに来られたら、身体はどうしたって反応してしまう。
自分一人なら士郎のためにと逆らったかもしれないが、龍之介はおそらく、お仕置きと称してジェイを弄ぶ。
棘だらけのバラには、近づかないのが鉄則だ。
愛しい恋人と離れて過ごすつらさを理解できないわけではなかったが、システムがこの反応を示すたびに確認しなくてはならない自分の身にもなってくれと、恨みがましい思いが募る。
もっとも、龍之介に釘など刺されなくとも、この事実を士郎に告げ、いたずらに辱める気はなかった。
始終、誰かと顔を突き合わせて過ごす寄宿舎生活において、唯一、一人になって心を解放する部屋での時間を奪われたら、最悪の場合、精神に支障を来しかねない。
心を病むことはなくとも、一人の行為を見られていたなどと知った日には、潔癖な士郎のことだ、今後己の部屋で二度とそういった行為には及ばないだろう。
そんな地獄を味あわせたくはないから、理不尽な役目に腹を立てながらも、日々耐えている。
チラと画面を見れば、布団の中の士郎が身悶えていた。
「……っ」
誓って士郎に邪な思いを抱いたことなどないが、龍之介を求める様は色っぽく、いつになく切なげで、どうしたって妖しく胸がざわめいてしまうから、タチが悪い。
行き場のない熱がこもる。
慌ててシステムから離脱した。
相手が龍之介とわかった以上、もはや見ている必要もない。
時計を見れば、まだ2時を回ったばかりだった。
夜までの気の遠くなりそうな時間を思い、絶望的な深いため息がこぼれた。
誘えば時間など関係なしに抱いてくれるとわかってはいても、肝心の、どう誘ったらいいかがわからない。
昼間から発情するような淫らな身体だとバレるくらいなら、我慢し過ぎの果ての刺々しい態度をなじられる方が、遥かにマシだ。
そもそもなぜ発情したかを聞かれても、答えようがない。
独りで処理したらしたで、薄い……と感づかれ、恥ずかしさの極致のような質問責めに合うのは目に見えていた。
妙に勘だけはいい恋人を持つと、苦労が絶えない。
熱が出そうだ。
いっそ熱が出れば、そのせいにして、ジェイに迫ることもできるのに。
八方ふさがりの身体を抱きしめ、ただひたすらに時が過ぎ、夜が来るのを待った。
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