アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
嘆き(煌牙side)
-
「……っ」
起き抜けに視線がぶつかるなり、頬をピンクに染め、雪夜が視線を泳がせた。
「……んだよ?」
居たたまれなさのあまり、語気が荒くなる。
「な、なんでもない……です」
ビクつかせている自分にも、すぐにビクつく雪夜にも、やたら腹が立ってしかたがない。
はぁ……。
喉元過ぎれば、ではないが、雪夜がまるで自分を恨んでいないとわかった途端、昨夜の己の醜態がやたら許し難いものに思えてきた。
隣にいろと息巻いた自分を思い出すと、ほとんど叫び出しそうになる。
いっそ、すべてなかったことにできないものかと願う端から、やたら熱っぽい視線を送って寄越すのだから、対処に困る。
見れば、ものすごい勢いでそらすくせに、少し経てばまた伏し目がちな視線がためらいがちに、だが熱く、まとわりついてくる。
煙るような淡く儚げな眼差し。
震える長く密生したまつげ。
もの言いたげな小さく紅い、可憐な唇。
雪のように白い肌と、中性的な細い身体。
下手な女より遥かに愛らしい雪夜に、揺れる瞳で見つめられると、妙な保護欲をそそられるのと同時にめちゃくちゃにしてやりたい欲にもかられ、頭がおかしくなりそうだった。
「あの、坊……」
「……んだよ」
「よかったら、その……、します……か?」
もはや嫌な予感しかしなかった。
「……何を?」
「前みたいに、その、口で……」
己の唇に触れながら、させてくださいと言わんばかりに訴えられ、眩暈を覚えた。
「……それくらいしか、できない……から……」
挙げ句の果てに、そんな奴隷のようなことを言い出す始末で。
怒りに任せて振り返れば、潤んだ瞳とぷっくりと艶めいた唇がまるで誘いかけるような凶悪さで、目に飛び込んできた。
「……っ」
血が沸騰するような感覚に、息を呑む。
「坊……」
まるで、欲しいと強請られているようだ。
ドクン、ドクン……。
「……んだ、これ……」
忘れていたはずの欲望が蘇る。
バカな、こいつは男だと自分を諌めてみても、欲情に己の瞳がギラつき、濡れていくのがわかる。
戸惑っていた雪夜が、ためらいがちに身体を寄せてきた。
そっと布団に潜り込んできた指先が、兆した欲望に触れる。
「……っ」
途端に、パッと瞳が輝いた。
同時に、泣き出しそうに表情が歪む。
桜が一斉に花開き、淡く可憐に舞い散るような表情に、目が釘付けになる。
思わず指先を伸ばしかけて、ハッとした。
指先を握り込み、視線をそらす。
危うく頬に触れるところだった。
不意にベッドのスプリングが軋んだ。
雪夜が片手を三角筋で吊った身体で、掛け布団の中に潜り込んできたのだ。
「バカ、やめ……っ」
だが、さすがはプロだ。
瞬く間に下肢をくつろげられ、熱い口内に迎え入れられてしまう。
「……っ、は……っ」
何をやっているんだか。
チュウチュウと吸いつかれ、ヌメる舌に敏感な先端や裏筋を舐め回されれば、どうしたって昂ぶる。
体力の落ちた身体では、上手く拒むこともできなかった。
「く…っ、離…せ…っ、も…出る…っ」
すると、どうぞと言わんばかりに、さらに深く咥え込まれた。
やわやわと、やわらかい唇で食まれ、すぼめた頬や喉の肉で扱かれると、もはや放つこと以外、何も考えられなくなる。
「く……っ、ざけ……っ、ん……っ、は…ぁ……」
ビュクビュクッ、と打ちつけ、なおも数度放ち、ようやく脱力して力を抜いた。
事後の気怠さの中、荒い呼吸を繰り返す。
「あの…っ、坊…、ごめんなさい…っ」
夢中になってしまって、と布団から顔を出すなり、泣き出しそうな表情で見つめてくる。
唇の端を、飲み切れなかった白濁が伝った。
淫らで、そのくせ胸が痛くなるほど儚く可憐な表情に、勘弁してくれと混乱から逃れるように、無事な方の腕で目元を覆った。
ここまで雪夜を仕込んだ相手にも、欲望を吐き出すだけの器として扱われながら、あくまで己を加害者だと思い込む精神構造にも、腹が立って仕方がなかった。
幼かったあの日、つないだ手を離さずにいられたのなら。
穢れないままの雪夜が隣にいたのだろうか?
「二度と……、二度とオレに触るな……っ」
これ以上、雪夜が汚れる様は見たくなかった。
当たり前のように自分を性の道具として扱わないでくれと、すべての感情を振り切るように、背を向けた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
145 / 297