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哀しみ(雪夜side)
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「……っ」
二度と触るなと拒まれた。
自分にはこれしかないのに。
込み上げてきた涙を、必死に飲み下した。
泣いたら、きっとそばに置いてさえもらえなくなる。
唇の端に残った坊の残滓をそっと舌先で舐め取り、惜しむように味わった。
苦い……。
でも、とびきり甘く感じられた。
一度でいいから抱いて欲しかったけれど。
自分には過ぎた望みだと、己を嘲笑った。
自分が男として生を受けたことを、これほど後悔したことはない。
女なら、坊の子供を産めたのに。
それだけを拠り所に生きていけたかもしれないけれど、自分には後に残せるものが何もないから。
「……わかり……ました……」
せめて邪魔にならないように息を殺し、この先もずっとそばに置いて欲しいと、すがるしかない。
いつまで……?
いったいいつまで、隣にいられるのだろう?
ダメだ……。
悲しい想像はしないに限る。
頭を空っぽにして、楽しいことだけを考えよう。
ずっとそうやって耐えてきた。
……大丈夫、きっとうまくやれる。
この先、坊が誰を愛しても。
空気としか思ってもらえなくても。
坊が生きていてくれたら、それでいい……。
そう思った。
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