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始動(雪夜side)
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ご飯を食べ終わるなり、克己と名乗った少年に手を引かれて、廊下に連れ出された。
坊と離れるのは嫌だと断っても、
「そのトラ君に喜んでもらいたくない?」
「そーそ。オレら何気に、すげーのよ」
克己とジェイにそろって自信たっぷりな笑顔でささやかれると、さすがに心が揺れた。
と、その時、
「……寝る」
坊が痺れを切らしたのか、席を立ち、振り返らずに部屋に向かってしまった。
拒まれているようで、泣き出しそうに歪んだ顔を、パチンと両手で挟まれた。
「不安なのはわかるけど、一緒になって落ちてどーすんの? せっかくここまで死ぬ気で追いかけてきたんでしょ? 協力してあげるから、もうひと頑張りしてみようよ。ね?」
にこっ。
温かい笑顔。
つらかったね。
よく頑張ったね。
まるで、そう言われてるようで。
込み上げてきた涙を、慌てて指先で拭った。
正直、一人ではもうどうしたらいいのかさえ、わからなかった。
できることがあるのなら、どんなに大変でもいいから頑張ってみたかった。
「お願い……します」
頭を下げると、
「よしきた!」
ジェイと呼ばれた少年が、ニカッと笑う。
「みどり、おまえも来いよ」
「……行くわけないし」
「冷てぇなぁ。彼氏の実力の程を知って、たまには惚れ直すのもいいもんだぜ?」
「……惚れてる前提からして、おかしいから」
ドヤ顏のジェイを、ばっさり切って捨てる、恋人らしき美少年。
「んだよっ、みどりのアホ、ケチ!」
「そんなに言うなら、今夜は一人で眠ったら?」
途端に、
「そ、そんなぁ……」
ジェイがキュイーンと犬のように耳を垂れ、涙目になった。
「……オレ、やっぱ帰る!」
「ジェーイ! ひーちゃん、ごめんね。30分でいいから、ジェイ貸してくれる? すぐに傷一つなく帰すから」
「別に……勝手にすれば?」
くるりと背を向け、去っていく翡翠を追いかけようとするジェイの首根っこをつかんで、克己がため息に暮れた。
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