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変身(雪夜side)
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「あの………、よかったんですか……?」
自分のせいで仲違いなどされたら困る。
「いーの。二人はこう見えて、ラブラブだから。後で思いっきりベッドで甘やかしてあげれば、機嫌も直るよ。……どーぞ、入って。ここが僕の部屋だよ」
部屋のドアロックを外すなり、克己がタタッと駆けてゆき、奥のクローゼットを開けた。
「うわ…ぁ……」
眩いばかりの、衣装の数々。
男性物はもとより、女性用のふわふわした素材のものも多くある。
「気に入ったのあったら、着てみていいよ」
「あ……、はい……」
裏の仕事の際は、身元を隠すために、大抵は少女を装っていた。
以来、女装イコール暗殺の図式が脳内にできあがり、自然、身体が強張ってしまう。
「どうかした?」
「女装……しなきゃダメ……ですか?」
「そっか……、何か嫌な思い出があるんだね」
両手を取られ、やさしくソファに導かれた。
「あのね、実は僕も幼い頃、けっこう散々な目にあってたんだ」
驚いた。
こんな天真爛漫な子が……?
「今でも時々、フラッシュバックに襲われるよ。でも、そんな時は達っちゃんに抱きしめてもらうと、すーっと楽に息ができるようになるんだ。それでね、思ったわけ。嫌な思い出は強引に忘れようとするより、幸せな思い出で塗り替えてしまった方がいいんだって。嫌なら無理強いはしないけど、よかったらダメもとで試してみない?」
そして、克己が今回の計画の全容を話してくれた。
正直、とても成功するとは思えない。
けれど、見ず知らずの自分に力を貸してくれようとする克己達の気持ちが素直に嬉しかった。
どうせ失うものなど何一つないのだ。
だったら、やれるだけのことをやってみたい。
「よろしく……お願いします」
「うん! 頑張ろーね」
胸が詰まった。
頑張って、ではなく、頑張ろうね。
何て温かい言葉なんだろう……?
「……あ、雪ちゃん、ストップ! 泣いたら目ぇ紅くなっちゃうから、我慢……ね?」
結局服装は克己推薦の真っ白いふわふわのセーターとチュールでボリュームを出した同色のミニスカートに決まった。
見るからに、男の自分が着るにはかわいすぎる気がしたが、名前の雪にちなんだ、純白のイメージなんだそうだ。
「ウイッグは後でジェイにセットしてもらうとして、やわらかいベージュブラウンのゆるふわロングかなぁ。メイクは断然、愛され系で♪」
パタパタと粉をはたかれて、目の周りや頬に、ブラシで様々な色が重ねられていく。
まるで、キャンパスにでもなった気分だ。
「肌がキレーだから、ほとんどカバーしなくても大丈夫そう。うるツヤにして、ちょっとタレ目にして、ふんわりチーク乗せて……って、うわぁ、かわい☆」
目を開けていいよと言われ、恐る恐る鏡を見れば、
「え……?」
……これが自分?
夢見るような眼差しの、砂糖菓子のように甘く儚げな美少女が、不安げにこちらを見つめていた。
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