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覚悟(雪夜side)
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ピンク色に上気した頬。
濡れたような艶をまとう、ぷっくりとした小ぶりの唇。
「ほら、ジェイ。いつまでもイジけてないで、手ぇ貸してってば」
「ううっ、翡翠……っ」
「もう、ホント、しかたないなぁ」
克己が奥の部屋に入っていったかと思うと、何かを手に戻ってきた。
「ほら、欲しがってたバニーちゃんの衣装!」
ピクッと、ジェイの耳が動き、キラキラした瞳が克己を見た。
「バニーちゃん!?」
「雪ちゃんかわいく仕上げてくれたら、あげるから、ね?」
「やるっ! 俄然やる気がわいてきたっ。ほら、かわいくしてやっから、任せとけーっ」
克己と壁際で見守っていた恋人の達也が視線を交わし、苦笑し合う。
「こんなどーしょーもないへタレワンコでも、腕は確かだから。安心して?」
任せて大丈夫だと言われ、黙って頷き、目を閉じた。
髪をいじられ、やがて、ふぁさりとウイッグを被せられた。
またもや、あちこちいじっている気配がする。
「ちょっと巻くから、動かないで」
先ほどまでとは打って変わった、真剣な声。
最後にリンゴのような甘い香りのスプレーを全体にかけらた。
「……OK、目ぇ開けてみ」
うながされ、恐る恐る目を開けた。
「……っ」
もはや、言葉にならなかった。
「これが……僕?」
信じられない。
魔法にでもかかった気分だ。
「ね、これなら、トラ君も騙せると思わない?」
コクリと自然にうなずいていた。
坊の女好きは有名だ。
同時に何人もの女性を屋敷に引っ張り込んでは、乱れた関係を結び、すぐに飽きては他を漁る。
一定以上の容姿なら、相手構わず手をつけた。
ただ欲望を放つためだけに抱いているのだとしたら。
自分にもチャンスがあるかもしれないと、鼓動が早くなる。
克己のプランはこうだ。
手術に臨む煌牙のために、雪夜のたっての願いで特別に女性を手配したという設定で、身体に負担をかけないように、リードは終始自分が取ると伝える。
貧乳だから恥ずかしいと脱ぐのを拒み、ふわふわのチュールでボリュームを出したスカートを履いたまま、できれば暗がりで事に及ぶ。
終わったら、そっと部屋を出ればいい。
気に入られれば、また呼んでもらえるかもしれない。
気に入られる自信など欠片ほどもなかったが、下手に甘えず、まとわりつかない面倒のなさは、好印象かもしれない。
「バレない……かな?」
坊と身体をつなぐことができたなら、もう死んだってかまわないとさえ思うけれど、それは坊を傷つけてまで叶えたい夢ではなかった。
知る限り、男を抱いたことはないはずで。
抱いたのが男だと知れば、嫌悪感を抱くかもしれない。
「僕としては、いっそ挿れた瞬間にバラしちゃえばいいと思うんだけどね。だって、こんなにかわいーんだよ? さすがのトラ君もグラッとくるでしょ」
残念だが、自分にそこまでの魅力はないと、苦笑した。
坊は面食いだと思う。
だからといって、顔がよければ堕ちるほど、甘い性格はしていない。
かつて坊が抱いた人の中には女優顔負けの美人もいたけれど、みな等しく飽きられ、捨てられたと聞く。
いつかは終わる虚しさに胸が潰れそうになっても、抱かれてみたい欲には勝てなかった。
雪夜のままでは抱いてもらうことすら困難なら、この夜にすべてを賭けようと、結局はそう決意した。
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