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苛立ち(煌牙side)
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「煌牙、少しいいか」
見れば、士郎の後ろに小さな影があった。
ふわりと、甘いリンゴの香りが漂う。
士郎に促されるようにして、おずおずとうつむきがちに前に進み出たのは、
「女……?」
ここは男子校だろうと、訝しげに士郎に目をやれば、困ったように視線をそらされた。
「雪夜に頼み込まれたんだ。おまえに女性を……その、抱かせてやりたいと」
「あんの、バカが……っ」
いったい何を考えているんだか。
呆れと苛立ちで、頭痛がした。
「あの……っ」
やわらかな、アルト。
どこか懐かしい感じがするのはなぜなのか。
そして、おずおずと女が顔を上げた瞬間、息を呑む。
天使……?
女の顔など、抱けるか抱けないかくらいでしか判断したことはなかったが、さすがにこれは目の毒だ。
泣く手前ギリギリでこらえているのだとわかる、潤んだ瞳。
小刻みに震える、細い身体。
そういう用途で用意された女のはずなのに、何だ、この不慣れな反応は……。
派手に荒れていた上に、一目でそうとわかるガードを引き連れて歩いていたため、まず普通の女は寄って来なかった。
父親譲りの鋭く整ったルックスのせいか、派手にモテはしたが、すり寄ってくるのはみな遊び慣れた女ばかりで、こういう純粋培養系は至極珍しい。
真っ白なセーターと太ももの大部分が露出したミニスカートのせいで、よけいに幼く無垢な印象が香る。
そもそもこのルックスなら、闇に沈むより表で売り出した方がよほど派手に稼げるだろうに。
さすがは雪夜が選んだだけあって、あらゆる意味で抱き捨てるには向かない人選に、ため息をつく。
「……帰れ。ガキを抱く趣味はねーよ」
ないはずだが、
「そんな……っ、困ります………っ」
泣き出しそうに歪む表情が、つい最近目にした雪夜のそれと重なり、おかしなスイッチが入りかけ、焦りばかりが募る。
あえてベッドに視線を逃せば、やがて、シュッとドアが開閉する音がした。
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