アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
煌めく(煌牙side)
-
「ん……」
目覚めると、ペタンとベッドに座り込んでいた雪夜が、パッと表情を輝かせた。
「坊、おはようございますっ」
「……っ」
破壊力満点の笑顔に、たじろいだ。
全身で好きだと訴えてくる、この小さな生き物を、誰かどうにかしてくれと、わめき散らしたい気分にかられた。
到底、まともに直視できたもんじゃない……。
とりあえず布団を被り直して、動揺を殺した。
「……化粧で顔、グチャグチャじゃねーか。朝から汚ねぇもん、見せんじゃねぇ」
「……っ、あのっ、すぐに洗ってきますからっ。……そしたら」
「……んだよ」
「昨日の続き……、してもいいですか……?」
期待に満ち満ちた声が、恥ずかしそうにポソッとつぶやいた。
……は!?
昨日の続きって……。
……はぁ。
「……あったま痛ぇ」
どんだけヤりてぇんだと毒づいたものの、考えてみれば、昨夜は雪夜として抱いてやったわけではない。
おまけに最後までしていないとなれば、未だ自分でいいのかと不安になるのも無理なかった。
いいも悪いも、うねるような中の締めつけを思い出し、こちらは早くも臨戦態勢だ。
別に、このまま雪崩れ込んでしまっても良かったのだが、笑顔一つでうろたえる自分を、しばし落ち着かせる時間が欲しかった。
望んだ雪夜の笑顔は、想像以上に愛らしくて、参る。
自分のものになれと言っただけでこれなら、雪夜自身として身体をつないだ暁には、いったいどれほど見事に花開くのか?
「……慌ただしいのは好きじゃねぇ。飯食って、シャワー浴びてから、……来い」
「え……? あ…っ、はいっ!」
愛らしく返事をすると、弾けるようにベッドから飛び出していく。
嬉しくて嬉しくて心は急くのに、体力の落ちた身体は思うように動かないのだろう。
駆け出したはいいものの、早くもドアの前で盛大にこけた。
「痛……っ」
「おい……っ」
慌てて身体を起こせば、ふわふわのチュールスカートがめくれて、半透明のレースの下着が丸見えだった。
「……っ」
チラ見せどころか、双丘の割れ目までしっかり見えた。
いったい誰のチョイスだと毒突く端から、思い切りぶつけた額をさすりながら、雪夜がこちらを振り返り、控え目に照れ笑いした。
その愛らしいことといったら……。
ようやく嵐が去った後、
「あー、もう、なんつーか、……色々やべぇ」
一人口元を押さえ、ため息をつく。
真っ暗だったはずの世界が、今や信じられないほど目映く煌めき、ざわめいていた。
あんな子供一人に振り回されてオタつく自分が情けない反面、ひどく愉快でもあった。
とにかく、見ていて飽きない。
どう転ぶかわからないボールの行方を、ワクワクしながら追いかけているかのような、幼い頃の無邪気な感情が戻ってくる。
同時に、終わりの足音がひたひたと迫ってくるのを感じてもいた。
失うものがなかった頃は、手術にすべてを賭けるのが唯一の道だと納得できたが、今は少しでも長くこの時が続けばいいと願う自分がいた。
手術台に上り、帰ってこられる確率がわずかなら、いっそ限られた時を大事に生きるのも一つの選択ではないか。
生きのびることではなく、雪夜との時間をいの一番に思い浮かべた自分に、苦笑した。
「生きてぇな……」
祈りにも似た切ない願いが、独りの部屋の空気に儚く溶けた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
156 / 297