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願う(士郎side)
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「ねぇ、あの二人、うまくいったみたいだね」
克己のささやきに、コンロの火を調整しながらダイニングテーブルを振り返る。
煌牙は相変わらずの仏頂面だが、雪夜はニコニコと嬉しそうだ。
それでも雪夜が話しかけると面倒くさそうに、だがポツポツと返事をしている。
明らかに、昨夜までとは様子が違った。
「ふふ、聞いてみよっか」
「おい……」
止める間もなく、克己が叫んだ。
「雪ちゃん! ちょっとこっち来て、手伝ってくれる?」
「はい!」
駆け出そうとした雪夜の腕を、煌牙がつかんだ。
「……走んな」
「あ……、はい」
恥ずかしそうに、それでいて嬉しそうに、雪夜が微笑む。
途端に煌牙が明後日の方を向いた。
心なしか、頬が紅い……?
「心配しなくても、あれは大丈夫そうだね。てゆーか、トラ君の方が重症?」
やってきた雪夜をつかまえて、克己が耳打ちした。
「ちゃんとできた?」
ほわんと、色白の肌がピンクに染まる。
「えっと……、したんですけど、最後まではできてなくて……」
この後、再チャレンジです、と雪夜が愛らしく両の拳を握りしめた。
「そっか。ね、ローションとか用意してる?」
愛らしい二人の妖しげな会話など、聞きたくもなかったが、どうしたって耳に飛び込んでくるものは仕方がない。
「あ……、ない…です……」
雪夜が絶望的な声を上げた。
「じゃあ、取りにおいでよ。余ってるの、あげるから。ゴムもいる?」
「……いえ、ローションだけ、お願いします」
「ふふっ、だよね? ゴム一枚で、全然違うもん。僕も断然、生派。まぁ、時間ない時とか、汚したくない時とか、持ってると色々便利だけどねー」
「……克己、その辺にしとけ。飯にするぞ」
放っておくと、どんどん生々しくなる会話に、居たたまれずに割って入った。
「ほら、煌牙の分だ」
「え……? 毒味は?」
「今日からはおまえがしてやればいい」
「でも坊は、あなたのことが……」
寂しげに瞳が揺れた。
確かにそう思った時期もあったが、今はもう違うんじゃないかと、離れた場所に座る煌牙を見た。
あからさまにイライラした視線とぶつかり、苦笑した。
「早く戻ってやった方がいい」
毒味をする雪夜をジェイが冷やかし、キレた煌牙が脱いだ靴をジェイにぶつけ、テーブルの周りは早くも、しっちゃかめっちゃかだ。
わーわー、ぎゃーぎゃー、騒がしい。
二人を祝福するやさしい光景に、胸が温かくなった。
……よかったな。
これで手術が成功すれば言うことなしだ。
だが、あくまで勝率の低い賭けだと、ルイは言った。
終わりがくるかもしれないと知りながら、互いの手を取ることを選んだ勇気ある二人の上に、せめてやさしい時が降り積もるよう、切に願った。
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