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嫉妬(龍之介side)
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『信じられるか? あの煌牙が、包みこむようなやさしい顔で笑うんだ』
珍しくも用もないのに連絡してきたかと思えば、トラとガキのことばかり話す。
あまり感情の表に出ない士郎の珍しくも興奮した口調から、心底喜んでいるのが伝わってきた。
それはそれで悪くはない。
悪くはないのだが、その顔を自分以外に見せるのかと思えば、面白いはずもなく。
「……なァ」
声を濡らして遮れば、電話越しにコクリと喉の鳴る音がした。
『な、何だ……?』
……そうだ、それでいい。
他の男のことなど考える暇もないほど、自分でいっぱいになればいい。
「……ご褒美、くれンだろ?」
『は……?』
「トボケてンじゃねェぞ。命張った恋人に、まさか礼の一つもねェとは言わねェよなァ?」
『……っ』
退路を一つ一つ塞いでいけば、形勢は自然、有利に傾く。
『世話に……なった』
「……あァ?」
『……っ、何が……望みだ?』
笑ってしまった。
相手に選択権を委ねるなど、人がいいにも程がある。
「……何でもしてくれるって?」
『誰もそんなことは……っ』
墓穴を掘ったことにようやく気づいたのか、声に焦りが混じる。
そんな些細なことが、楽しくて仕方なかった。
どうしようもなく乱したくて、どうしようもなく心が躍る。
囚われているのは、いったいどちらの側なのか。
「……ったく、どンだけこの声が好き好きなンだか」
『違……っ』
「……へェ、好きじゃねェって?」
なら試してみるかと、ことさら甘く声を濡らした。
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