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憂い(士郎side)
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白濁に塗れた手でデスクを叩き、目の前の惨状に言葉を失った。
マホガニー素材の色の濃い机に、劣情の証のような白濁が淫らに散り、あまつさえ、なすりつけられている。
刻一刻と冷えていく下肢に、早く身繕いをしなければと思うのに、怠さと虚しさに苛まれて、動く気にさえなれなかった。
我慢に我慢を重ねた果てに放たれた白濁は、我ながらどうかしていると思うほどに濃い。
欲求は溜まったが、自慰をすればどうしたって龍之介を思い出す。
吐き出した後は、する前の何倍も色濃く龍之介の不在を感じた。
それが嫌で、どうしてもギリギリまで我慢してしまう。
龍之介が同じようにストイックな生活を送っているとは端から思っていなかったし、それを許したのは他ならない自分だ。
……それでも。
本人の口から聞かされると、さすがにショックが大きかった。
せめて隠せと、すでに通信の途絶えた相手を、切なさとやり切れなさの中で詰る。
いつだって欲しがるのは自分ばかりだ。
底なしに甘い毒のような声で乱すだけ乱して、後は知らん顔など、まるで悪魔の所業ではないか。
囚われた己をただひたすらに嘆くのは、だが、どうにも性に合わなかった。
それくらいなら血反吐を吐いてでも平静を装う方が、百倍もマシだ。
じっと深い静寂の中で耐えていると、やがて少しずつだが、冷静さが戻ってきた。
忙しい最中、結局は命を盾にして己の願いを聞き入れてくれた。
まともに礼も言わせないのは、龍之介なりのやさしさと照れ隠しだと、わかってもいた。
「望み……過ぎだな」
自由とスリルを求め戦場を駆け回る男のすべてを欲しるなど、バカげている。
そんなことをしたところで、待っているのは破滅ばかりだ。
その心の向く先が自分であるのなら、他のすべてを許してやれるくらいでなくては到底、恋人など務まらない。
はぁ……。
目指す場所は遥か遠い。
あの男と並び立つために。
まずはそばで守られなくとも独りで立てる自分になるために、とにかく戦闘能力を向上させなければと、無理に前を見据え己を奮い立たせた。
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