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余韻(士郎side)
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ジムに併設されたリングでの、恒例の訓練の後。
床にへばった腕を取って引き起こしてやると、ヘッドギアを外した克己がむくれた顔をした。
「シロちゃんってば、気合い入り過ぎ。シロート相手に本気にならないでよ。さすがにちょっと怖かったし」
手加減したらしたで怒るくせに、という言葉は、口にしないでおいた。
少女めいた外見にだまされてはいけない。
この幼馴染のプライドは天よりも高いのだ。
「でも何だかちょっと、スッキリした顔してる?」
まじまじと顔をのぞきこまれて、思わずピクッと頬が震えてしまう。
まさか一部始終を見られていたとは思わないが、シャワーで流したはずの白濁の匂いでも残っているのかと、不安になる。
「……へぇ? 龍ちゃんと何かあったわけだ。どーりで色気タダ漏れだと思ったよ」
「い、色気……!?」
そんなものが自分にあってたまるかと、目を白黒させれば、
「や……、マジ抑えて欲しいっす」
「……目の毒」
「……はは、確かにちょっと、困るかも」
ジェイ、翡翠、達也からも次々と抗議の声が上がる。
「士郎さん、普段との落差が激しーから、マジやべぇんだって。何なんすか、その龍之介さんが乗り移ったみてーな、色濃いフェロモンは!?」
ジェイが大きな手の平で頭を抱え、身悶えている。
その尻に翡翠の冷たい蹴りがクリーンヒットした。
「っ痛ぇ……!」
「……シロさんを穢すな」
「んだよ、妬いちゃって、かっわいーなぁ」
「っ、誰が!」
「心配しなくても、オレはいつだって、みどり一筋だって」
ギュウギュウ抱きしめながら頬ずりするジェイを、翡翠が必死に遠ざけようと暴れている。
だが、その陶器のように白くなめらかな肌が、首まで紅く染まっていたのでは、愛らしいだけだ。
「……すんません、オレら先に上がります!」
トレーニングで程よく汗ばんだ恋人を抱きしめた挙句、やんごとなき事態に陥ったらしいジェイが、嫌がる翡翠を軽々抱き上げると、一目散にシャワールームに消えた。
「若いなぁ」
克己が微笑ましそうにつぶややいた。
「……おまえも充分、若いだろう」
「ツッコミに覇気がないっていうか、まだ訓練が途中だけど、あの二人止めなくていーの?」
「止めてどうにかなるものでもないだろう」
集中力のない中での訓練は怪我を誘発するだけだ。
それに先程の己の所業を思えば、到底止められたものではなく。
まるで抱き合った後のように汗ばみ、火照り、その上、己に欲情する恋人の姿を目にすれば、誰だって平静でなどいられない。
危うく龍之介の声や痴態が蘇りそうになり、慌てて鋭すぎる幼馴染から顔を背け、必死に表情を殺したのだった。
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