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喪失感(士郎side)
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恋人がいつでも触れられる距離にいる。
その幸せを、離れて初めて知った。
普段は抑えていられても、時折、叫び出しそうなほどの痛みに襲われた。
ベッドに身を投げ出し、もはや龍之介の匂いを失ったシーツを握りしめる。
久々に龍之介と抱き合った余韻を手放したくなくて、何日も乱れたシーツを洗濯するのを渋ったりもした。
どちらかと言えば清潔好きなため、普段は3日と置かずにシーツを変えるのだが、大した変わりようだと、自分で自分に呆れてしまった。
さすがに永遠にこのままにはしておけないと洗ってはみたものの、洗い上がったシーツに、確実に大切な何かを失った気がして、落ち込んだ。
……バカげている。
声を聞いて映像で見たら少しは落ち着くかとも思ったが、到底足りやしない。
必死に抑えていた想いが膨れ上がり、身体の内側から幾百もの見えないトゲに刺されているかのように、呼吸することさえ苦しく感じた。
今この瞬間にも、誰かが龍之介の象徴を口に含み、味わっているのかと思うと、本気で気が狂いそうになる。
溢れた蜜を味わい、白濁を呑み下す相手を、龍之介はどんな風に見つめるのだろう?
自分との時のように甘く……嬲るのだろうか?
それとも乱暴に喉奥を犯すのだろうか。
嫌だ……。
離れているだけでも耐え難いのに、あの声が……身体が。
一瞬でも他人のものになるなど、許せなかった。
今すぐ電話をかけて、止めろと叫んでしまいたい。
叫べば龍之介はきっと憐れみを宿した瞳で、少し困ったように笑うのだろう。
だが結局は、何も変わらない。
もとより、人に何かを言われて道を変えるような男ではない。
できない約束はしない代わりに、一度した約束は死んでも守る。
たとえ自分との仲がひどくこじれようとも。
それでいて、けして手放すつもりはないのだと、届かない距離にいながらにして身体に教え込まれた。
吐息や温もりを感じられそうなほど近くで、電話越しにささやかれても、肌と肌が合わさる感動には程遠い。
あれほど嫌っていたはずの男を、今では荒れ狂う夜の海でようやく見つけた灯火のように、ただひたすら一途に求めている。
たまらずに、龍之介の肌の感覚をなぞった。
違う……。
あいつの手の平はもっと肉厚で、しっとりとしていて、包み込むように熱かった。
触れられるだけで肌が泡立ち、身の内に隠した欲望という欲望を引きずり出されるような。
焦らすように触れ、その手でなければ感じないよう、念入りに教え込み、切ないほどの感じやすさばかりを残して消えていく。
キツく己を抱きしめて、必死にうめき声を殺した。
「……龍」
せめて届けと、つれない恋人の名を呼んだ。
「龍……っ」
毒のように甘く、雷鳴のように激しい、あの男が欲しかった。
自分が本当に狂ってしまう前に、どうか早く会いに来いと、願いを遥かに凌駕する熱量さで祈りながら、身体の震えが止まるまでの間、龍之介の名を呼び続けた。
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