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飢餓感(龍之介side)
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喜怒哀楽の激しい小動物系のマコトだが、これでナイフを持たせると、まるで人が変わる。
試しに懐のナイフに触れようとすると、素早い動きで腕を取られた。
「人のもんに手ぇ出すのは、関心しねーな」
もはや、自らの身体の続きのように慣れ親しみ、こなれた仕草でナイフを手に取ると、首筋の皮膚ギリギリを突いてくる。
鋭い視線を感じて目を向ければ、マコトの恋人であるユージンが嫉妬を露わにしてこちらを見つめていた。
「……イイのかよ? 愛しの王子様がおかんむりだぜ?」
凍てつく空気がつかの間和らぎ、カアッと頬に朱が走る。
「……っ、卑怯だろっ」
「相手の弱点をつくのなんざ、定石だろーが」
マコトのナイフの手業には、常日頃から手を焼かされていた。
トータルでの力量では勝っていても、純粋にナイフでの勝負に持ち込まれたら勝ち目は薄い。
ゆえに、崩す。
試合はリングの外ですでに、始まっているのだ。
「……なァ」
あえて耳に頬を寄せて、ささやいた。
「オレのとアイツの、どっちが好みだ?」
「止めろって……っ!」
さんざん言葉で、指先で乱してきた身体だ。
心を乱し、奥を疼かせる方法など、考えるまでもない。
「ココがオレのカタチを覚えてンだろ? それともユージンに抱かれまくって、忘れちまったか?」
焦った隙をつき、双丘の狭間に指を差し込んで、グッと服の上から力を込めてやる。
それだけで腕の中の身体は、呆気なく崩れた。
「……っ、は…っ」
発情する身体を、横から力強い腕が奪い去っていく。
「マコトを返せ……!」
人を殺しそうな瞳をして青白い炎を噴くユージンに、両手を上げて肩をすくめた。
「冗談だろーが。……そう熱くなンな」
床に転がったマコトのナイフを拾い上げて、刃先に舌をはわせて見せた。
「オレぁ単に、マコにナイフ持たせて、場の空気をピリっと締めてもらいたかっただけだ」
エロ過ぎるカラダのせいで、逆に乱しちまったけどなァ、と笑えば、マコトにおまえに言われたくないと睨まれた。
「エロくて何が悪い? オマエだってエロくてカンジやすい身体の方が、抱いてて楽しいだろ?」
ユージンに同意を求めれば、硬質な男の視線が焦り、揺らいだ。
「ははっ。やっぱどっか似てンだよなァ……」
士郎とユージンは背格好が同じ上に、硬質な空気感も似通っている。
ある意味ひどく厄介な存在だった。
たまらなく士郎が欲しい夜などは、思わず手が伸びそうになる。
めちゃくちゃに抱き潰せば、何かがほんのわずかでも埋まる気がして。
「……なァ、オマエ、もうちょい太るか痩せるかしろよ」
ひどくバカなことを言っている自覚はあったが、飢餓感はすでに自分でも制御できないレベルにまで達していた。
仮にも親友の恋人に、手を出したくなどない。
「それか、あンま近寄ンな」
「はぁ……!?」
ちょっかいかけてきたのはどっちだと、怒り心頭のマコトと無言の抗議を送ってくるユージンをシッシと手で振り払うと、渦巻く情欲を抑え込みながら、黙って背を向けて距離を取った。
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