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リング(龍之介side)
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マコトにナイフを持たせて、場の空気をピリッとさせようという意図は、中途半端に終始した。
逆に淫らな空気感が漂い、こちらの声の魅力に乱された輩があちこちで前屈みになったが、知ったことではない。
勝手に盛って堕ちていけと冷めた視線を投げて、リングに上がった。
リンから贈られたバトル用の靴は、さすがは特注品と言わんばかりの裸足に近い履き心地のよさで、まさに吸いつくように軽かった。
お陰で、これ以外の靴はすっかり受けつけなくなった。
色は黒。
スポーティータイプにも関わらず、見た目はフォーマルでも充分対応可能なエレガントな造りになっている。
コンマ数ミリにこだわる職人の手業とは、すごいものだ。
リングの上で軽く跳ねても、ほとんど音がしない。
愛用のサブマシンガンしかり、使い込まれた物には魂が宿るという。
身につけるだけで深く心が落ち着き、覚醒や集中のレベルが上がるのだ。
このヒリつく感覚が好きだった。
これだけで、たまらなくクる。
ゾクゾクとはい上がってくる快感とも取れる興奮に、唇を舐めた。
ゴクリと対戦相手の喉が鳴る。
アゴを上げて、ニヤリと笑った。
「……ンじゃ、ヤろうぜ?」
誘いかけた。
まるでベッドの上で身体を重ねる時のように、欲情に瞳を濡らして。
「……っ」
興奮のままに突き出された敵の拳を、わずかに身体をずらしてかわし、跳ね上げた。
足を払い、取った腕を支点にリングに沈める。
うつ伏せにした相手の腰に乗る形で首に腕を回し、同時に肩関節を極めた。
「ヒュ……っ」
このままもう少し強く締めれば、確実に落ちる。
逆転の要素はどこにもない。
あっさり引き下がるかと思いきや、抵抗を見せた。
仕方なく、殺気を送る。
「……このまま逝くか?」
ジワリと敵の喉元から滲み出した汗が、剥き出しの腕をヌルつかせた。
恐怖は時に甘いフェロモンを香らせ、脳の奥深くをざわつかせる。
「……ヤベェな、勃っちまいそうだ」
「……く…ぅ」
「……イイ子だから、大人しくしてろ」
耳元で低く脅すようにささやきながら、グッと力を込めれば、唯一残してやっていた敵の左手が、ようやく地面を叩いた。
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