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SOS 2 (士郎side)
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「そんな辛気臭い顔で立ってられる方が、周りの空気を乱す。しょせんオペをするのはオレだ。おまえがいたところで何ができるわけでもない」
「……っ、だが、雪夜のことを頼まれている」
「雪ちゃんのことは、僕らがちゃんと見とくから」
首を振った。
雪夜はああ見えて、暗殺の訓練を受けている。
本気になった雪夜を、克己たちがどうこうできるとは思えなかった。
途端に、克己の怒りが爆発した。
「んもーっ、シロちゃんの分からず屋っ、頭でっかちっ、薄情者の大バカ野郎っ!」
拳で胸を打ちつけられても、不思議なほど痛みは感じなかった。
龍之介を失うかもしれない恐怖に、心はすでに氷のようにひどく冷え切っていたからかもしれない。
「龍ちゃん、会いたがってるってよ……?」
聞こえないの……?
つぶやいた克己の瞳が潤み、綺麗な色の雫が溢れた。
「シロちゃんのこと、ずっと呼んでるのに、どうして……っ、何で行ってあげないんだよ……っ!?」
龍之介が呼んでいる……?
どうして行かない……?
頭がひどく混乱して、何が大切なことなのか、事の優先順位が見えなくなる。
不意に腰にしまっていたスマートフォンが震えた。
「……はい」
『……士郎か』
煌牙のハスキーな声が、気だるげに響く。
『昨日言ったあれな、別にてめぇじゃなくてもいい』
「……?」
『誰かを代わりを寄こせ』
煌牙の言葉に、力なく首を振った。
「約束は……果たす」
『……ざけんな! んな同情、いらねーんだよ。つか、そんなんで使いもんになるか。今にも死にそーな声出しやがって』
はぁ……、と煌牙がスピーカー越しに深く吐息した。
『……いいか、悔いだけは残すな』
命の極を見つめる瞳が、まぶたの裏に浮かんだ。
『本当に大事なもんを見極める目を持て。……他人の願いなんざ捨て置いて行きゃいい。てめぇが一番大事にしてぇヤツは誰だ? ……オレや雪夜じゃねーだろーが!』
てめぇの意気地のなさをオレらのせいにすんじゃねぇ、と吐き捨てて、ブチッと通話が切れた。
呆然と立ち尽くす。
煌牙の言う通りだ。
行った先で、龍之介が冷たくなっていたら?
恐ろしい現実に震え、もっともらしい理由をつけて、楽な方に逃げ込んでいなかったか。
いらぬ恩を売られる側は、たまったものではないだろう。
あの男が死ぬはずがないと思う端から、どんな人間にも死は平等に訪れるのだと、極当たり前の原理が冷水を差す。
……死なせてたまるか。
不意に、無性に腹が立ってきた。
自分をここまで堕としておいて。
あの男しか見えないほど深く暴かれて、受け入れる悦びを教え込まれた身体は、もはや己が触れただけでは満足できないほど淫らに変えられてしまった。
責任は取ってもらう。
誰が置いていくことなど許すものか。
「……行ってくる!」
迷いを振り切ると、ボストンバックを肩に担ぐなり猛然と駆け出した。
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