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レモンキャンディ③
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(島田真理語り)
公園には他に誰もいなかった。
辺りを確認して、信一が話し出した。
「あのさ、俺さ…やっぱりお前…真理のこと好きだからさ、付き合うとか、もう一度考えてほしい……(渾身の告白は続いているが、真理は全く聞いてない)」
はぁーーうざい。うざい。うざい。うっとおしい。
付き合えないってこの間言ったでしょうが。
断ったにもかかわらず、学校にまで来て同じことを繰り返すとか、あり得ないんだけど。
ものすごくイライラする。
しかも一通り話し終えてから、信一が伊藤君を指差して
「真理、こいつ誰だよ。」
と言った。今更?遅くない?
そういう自分本位なところも嫌いだ。
まあいいや。僕のやり方で断るから。
「あのね、僕たちはこういう関係なの。」
僕は信一に見せつけるように、伊藤君に濃厚なキスをする。
彼は少し背が高いので、ちょっとだけ背伸びをした。
言葉を失う信一と、何をされたのか分かってない伊藤君。
思いの外、伊藤君とのキスは気持ちが良かったので、舌も入れてみた。
最初は応えてくれたけど途中で正気に返ったみたいだ。
「こんなところで、やっ…め…ろっ。」
僕を突き放して、最もらしいセリフを吐いた。
これでますます僕たちは恋人関係に見えるかな?
ありがとう、伊藤君。
「こういうことだから、信一とは付き合えない。行こう。」
ガーンって言葉を顔で表したらこんな感じなんだ。
初めて見た。はい、これでおしまい。
立ち尽くす信一を公園に残して、僕は伊藤君とその場を後にした。
「島田君、ちょっと。」
手を引いて歩いていると、伊藤君が急に立ち止まった。
「さっきの何?あれ誰?突然何なんだよ。」
「あいつは信一。兄ちゃんの知り合い。何回か寝ただけなのに、付き合ってくれってしつこくて。断るのに伊藤君に協力してもらった。」
伊藤君が一瞬固まった。
「俺の役目は終わりだね。帰る。」
僕の話を聞いて驚かなかったぞ。伊藤君って……案外凄いかも。
「待ってよ、伊藤君。」
追いかけて回り込み、グイっと手を引っ張った。
「何?」
「協力してくれたお礼に何か奢るよ。」
「いらない。帰る。」
伊藤君、面白そうだから、もうちょっと遊んでいたいな。
帰れない状況を作れば一緒に居てくれるかもしれない。
「あーーーーやばい。信一に家を知られてるから、追いかけてくるかも。殴られる。」
思い出したかのように芝居がかった演技を見せた。
「殴るような人に見えなかったけど。」
「伊藤君は知らないんだよ。あいつはスイッチ入ると止まらなくなるんだ。」
伊藤君の動きが止まった。
うふふ、考えてる。考えてる。
「じゃあ……家まで送ればいい?」
にへらぁと頬が緩むのが分かる。今の僕、きっと悪い顔をしている。
「送ってくれるの?ありがとう。」
「無事に送ったら帰るから。」
僕の家の方向へ一緒に歩き出した。
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