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その言葉の意味は
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知ってる。あいつが誰にでもヤサシイこと。あいつがイイヒトをやめられないこと。でもそんなの俺には関係ない、イラつくもんはイラつく。お前なに、ブスな顔してんの。へんな笑み、それにつられる女もどうかしてんな。
やめればいいのに。一体なにになるってんだ、何がプラスになるってんだ。俺に助けられて悔しそうな顔するぐらいなら………まぁ。一度築いた人間性は、んな簡単に崩せねぇか。
俺は知ってる。理解しているわけではないけど、こいつがどうしてこうなったのか、知ってる。昔はもっと本音をいう奴だった。人当たりが良く、面倒見がよく、悩みも特に見せず、さらにしっかり者、なんて人間は気持ち悪い。そんな善人がいるとは思えない、人間味がない、最悪だと思う。ただ、最悪でも魅力的だ。みんなそうなりたい、そうありたい姿を、ハナクソは演じて生きている。本当のお前は?口も悪けりゃ態度もデカイし思ってるより簡単に傷ついて、よく泣く。いつも悩みが尽きない。家族のこと、友達のこと、手いっぱいでどうしようもない。くせに、誰にも言えずに参ってる。なんって損してる人生。
ばっかじゃねぇの、人の目ばっか気にして、お前は一体何になりてぇの?
嫌われる事を人一倍怖がるハナクソに教えてやりたい。お前を嫌いだっていう人間はこの先必ず現れる。そいつに嫌われないように生きることが、お前の全てか。つまんねーの、そんなの。俺だってお前なんか嫌いだったよ、生理的に無理だったよ、なんで瞼にハナクソつけてんの?なんで自分が損することを進んでやんの?なんで、ちゃんと「本音」を言わねぇの?って。それでも今、このザマじゃねぇか。
特に嘘をつくわけでもない。でも自分の本心を言うわけでもない。ハナクソは意見が苦手だ。人に合わせて流されて安心している。それもそれでウザい。それでいいってんならいいけど、結局お前、最後は悲観的な目で自分を見るだろ。まじウザい。それならほんと、いっそのこと自分のことだけ考えりゃいいのに。
そんなイライラが募りに募って嫌いになった。なんでイライラしてたか今ならわかる。お前が損してるとこが見たくない。お前が諦めた顔してるとこが見たくない。本当のお前はブスでクズみたいな男だ。でもアレだ。そっちのほうがいい。俺に、あのへらへらした顔向けてきた日には思いっきり殴ってやるって決めてたけれど、そんな素振りは一つもない。素で俺に接することができるくせに、なんで他人にはそれができねぇのか理解不能。つーか、古賀にまでニコニコしちゃって、ガードの硬い奴!
もし、だ。流されただけで俺とこうなったというなら、ぜんぶお前のせいだ。恋泥棒だ。クズだ。でも、違うだろ。ほら、今だって顔赤くして、俺の一歩後ろを歩いてる。
ハナクソの歩幅は、俺より狭い。一般的男子高校生のそれは、俺にとっちゃ小さい。歩幅を合わせて歩くのは難しいから、ゆっくり歩くわ。
って、そんな気遣いができるようになりました。それもこれもどれも全部、ハナクソのおかげでございます。
俺の好きなものを理解したいと行動したお前も、随分変わったよ。いい意味だよ。口に出しては絶対言わねぇけどな!!
だから。俺も理解できるように頑張ってやる。お前のめんどくさい性格、俺にしか本心を見せないってのも、まあ別に…悪くない。
最後に泣きつくのが、家のクッションじゃなくて俺ならいい。それでいいわ、もう。
そうやって!!思わされるから!!こいつのこと嫌い!!!
手に汗、冬だけど。緊張してんの、分かってんの?
お前知らないだろうけど、知ってもらっちゃ困るけど、俺いつもそうだよ。心臓握られてるみたいに痛ぇの、多分寿命縮んでる。
お前よりずっと、緊張してる。絶対。
だって俺、家に誰も居ないって言っちゃったし。
リベンジだ。サラダ油はさすがに可哀想だからちゃんとローション買いました。おこずかいで買いましたよ。
自宅のマンションについて、鍵を開ける。自動ドアが開いて、エレベーターの三角を押す。ここまで真顔だし会話もゼロ。でも手は、離してない。
エレベーターの扉が開いたら、俺が先に乗り込む。その後をハナクソが入ってきて、扉が閉まった。五階、そのボタンを押す前に。
「……っ!!!」
ハナクソの耳に唇を落とした。
んな大げさにビクつくなよ。傷つくわ!!
咄嗟に、離れそうになる手を掴み直す。お前、俺に、力じゃ勝てない。
ずっと一緒だった身長も、体格も、全部いつの間にか俺の方がデカくなっていた。目線が変わりはじめた頃は俺とお前は他人、それに気づいた頃は腐れ縁、それを意識し始めた今は、恋人。
俺は浮気はしない。モモちゃんは別だけど。だからお前もヘラヘラすんな、女に笑いかけんな、お前はブスだけど、ブスじゃねーから、それに惚れられたら困る。独占欲は人一倍強い、嫉妬もする、知ってる。俺もお前のこと理解する努力するから、お前も分かって。
一度落とした唇はとまらない。掴んだ手を壁にくっつけると、自然とハナクソの身体も壁にくっつく。チビ。…でもないか。でも俺にとってはチビ。困惑した目、ウザい。そんな目で俺を見上げんな。ムラムラするから。
俺、健全な男子高校生です。今手ぇ握ってんのは不本意ながら恋人です。そりゃあ、もう、我慢って何だよってかんじ。
俺が初めてお前にキスをしたのもこの狭い箱の中。薄くてかさついた唇、には、またあとで。
吸い付くように、右瞼にキス。
寝てる時にしか見えないその瞼のほくろ、印象的で嫌いだった。
今はそうでもない。
唇を瞼から離して、五階のボタンを押した。手は離さない。ハナクソは「……おい」と一言。
「なんだよ今の!!!」
「嫌なら七階のボタン押せば」
「っハァ?!もう、お前ほんとどこでスイッチ入んの?わっかんねー!」
「わかんなくていいよ、面白いから」
「ほんとウザいな!だからお前友達いないんだよ!」
「こんな狭いとこで喚くなよ!お前はもう少し意識しろ!」
「な、」
「分かれ。お前このまま手ぇ離さないで俺の部屋にくる意味を」
じ、っとハナクソを見つめると、ハナクソの顔は赤かった。目に、困惑の色。耳まで、首まで、赤くなっちゃって。………それは、俺も一緒か。握る手に力を込める、このまま俺についてくるってんなら、待ったはナシだ。なんたって健全な男子高校生だからなぁ。
「抱かれたくねぇなら、手、離せ」
至って真剣。チンっ、と音が鳴って、エレベーターの扉が開いた。
どきどき、どきどき、心臓うるせーよ黙れまじで。ハナクソがもごもごと何か言ってんの全然聞こえねぇじゃねぇか。
…でも。ハナクソの、手が離れる気配はない。立ち止まっていると扉が閉まりそうになる。それをハナクソは、左手でこじ開けた。そして、俺の顔は見ないで言い放った。
「心臓の、準備しとく。」
だから夢中になる。
どう言い訳して、お前を嫌いになればいいのかわかんねーよ。
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