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苦手なタイプ
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ハナクソは頭が良い。
テストの点数かいい頭のよさではなく、学んできたことを今後の応用に使える頭の良さだ。俺はどちらかというと、テストの点がよければ満足して次の瞬間には忘れるタイプで、ハナクソが過去と現在を照らし合わせて未来の答えを出そうとしていても俺にはあまり理解ができないわけだ。
過去の俺たちは顔も見たくないぐらい嫌い合っていた。今の俺たちは毎日会いたいぐらい好き合っている。そしたら未来の俺たちは、過去の俺たちと未来の俺たちを足して2で割っていい友達になっているとでもあいつは思っているのか、「お前の子供も天パかもな」なんて言ってきたから少し意地悪な返事をしたら、この世の終わりみたいな顔をされた。
そんな顔するぐらいならはじめから言わなきゃいいのに、馬鹿じゃねーの。
それから数日、とくに代わり映えない日々を過ごした。気になったのはハナクソが女と連絡を取り合ってることぐらいで、その理由も「詳しくは言えねぇけど浮気とかじゃねぇぞ、村上さんが室井先輩のことすきらしいから協力してるだけ。…まあ室井先輩には小林先生がいるから諦めるように話しもっていってるけど」と、ご丁寧に詳しく教えてくれた。こいつやっぱり馬鹿なんじゃねーの、と思ったけど、俺たちの仲がくだらねぇことで壊れないように、俺に嘘をつかなかったことは純粋に嬉しかったし、村上って女がどこの誰かも知らねぇからそれを言いふらすつもりもなければどうでもよかったから「ふーん」とだけ言っておいた。
俺だって、この先の未来に全く不安がないかと言われたら嘘になる。
最近はまともに会話してないけど、頭がぱっぱらぱーのどうかしてる兄も行平くんのことがすきかもしれない疑惑がたってるし、クソがつくほどチャラ男のあの兄貴だってなぜか恋愛ごとは長続きする。誑かすだけ誑かして本命は絶対に傷つけないその姿勢だけはまあ、認めてやってもいいぐらいだ。もし兄貴達もうまくいけば、柳家の男どもはみんなホモになる。つまり柳家の終わりは近い。でもだからなんなのって話だ。俺は柳家の名前を残すために生まれてきたわけじゃない、ハナクソを手放すぐらいだったら家を出て行く覚悟ぐらいある。
それをごちゃごちゃ考えやがって、マジ腹立つ。ハナクソは俺の未来に必要だけど、ハナクソには俺の未来の選択に介入してほしくない。あいつは、感情を、殺してでも、世間体を選ぶような賢い馬鹿だから。
ただ、ハナクソが俺に嫌気がさして俺を選ばないっていうなら、俺は身を引くかもしれない。
ハナクソの未来に俺が関係なくなったら、俺がとやかくいう理由にはならないから。
それが関係、それが恋愛、それが正解。
だけどそんなこと、今の俺たちにはとうてい関係ない。関係ないことを今から悩んでも勿体無いだけだろ、時間の。そう思う俺はまだまだガキなのかもしれない。
ハナクソと自分は違う人間だ。違う人間なんだから考え方も違って当然だ。理解しようと努力はする、だけど譲りたくないものは必ずある。
「はぁ。」
でかいため息がでた。
ちなみに今、俺は一人でカフェのカウンター席に座ってる。今日は日曜日で、学校はない。ハナクソは家族で出かけるとかでいない。ヒマだからカフェにきてブックカバーのついたラノベを読んでる。家にいたら息がつまるから外にでてきたのに、外でまでこんなことを考えてたら身も蓋もない。
だけど考えずにはいられない。
終わりが来て欲しくないから終わらないように頭を使うわけだ。
成長した、俺は。ハナクソとこういう関係になってかなり成長したと思う。1年前の俺が今の俺を見たらちょっと引くぐらい、成長してる。
すこしすれば、三年生が卒業する。
そしたら自動的に学年がひとつ上がって、クラス替えがある。
学校でハナクソと俺が同じクラスにならなかったことはない。今まではそれをなんらかの呪いだと思っていたし、できればクラスは離れたかった。でも今は、……
(同じクラスがいいなぁ)
………………………………。
俺、もしかして頭おかしくなったか?
こんなに執着する人間だったか?
つーかなんか、アレか?
俺今、恋煩いというやつをしてるわけか?
めちゃくちゃ恥ずかしい男なんじゃねーのか?
…やめよう、こういうのやめよう。
無理だ…俺らしくない。俺らしいってなんだ?俺は俺で俺だから俺だったのに俺じゃなくなりはじめてつーか俺じゃないのか?俺は今何を言ってる?やっぱ狂ってんじゃねーか?!
意識を切り替えるように目の前に置かれたキャラメルフラペチーノを飲む。口の中が甘くなるのを感じてラノベに視線を戻した時だった。
「柳くん?…やっぱり柳くんだ!」
「…………?」
隣の席に腰掛けた女が突然話しかけてきた。清楚な見た目で真っ黒のコーヒーをトレイに載せている女。なんだ?だれだ?なんで俺を知ってんの?怖いんですけど?
「あ、わからないよね、だってあんまり話したことないもんね。えっと、私隣のクラスの村上りなっていいます。奇遇だね、こんなところで会うなんて」
?村上?村上?なんかきいたことあんな……ああ、あれか。ハナクソが最近連絡とってる女か。室井先輩がすき?とかいう。あんま話したことないどころか初めて話しますねぐらいの勢いなんだけど、知りませんとか言うわけにもいかねーし「あ、どうも」と言って視線を逸らした。
「一人?珍しいね」
「え、あー。そうだな」
なぜだ。なぜこの女は話しかけてくる。やめろ、俺は今カフェで小説(ラノベ)を読んでる好青年なわけで、はじめて話す隣のクラスの女とする会話なんかねーんだよ。
「いつも松くんと一緒にいるイメージだけど、さすがに休日は別々かぁ」
「そりゃまあ、そうだろ。」
いや今日たまたまあいつが家族で出かけてるから俺一人なんだけど。なんて言えるわけもなく、適当に相槌を打つ。もうやめてくれ、なんであんたも一人でカフェに来てるんだよ、最近の女はひとりでも余裕ってやつか、そうなのか。あんたと話すことはありませんって態度をとってるのに、なんで話しかけてくるんだよ。あれか?なんとなく気まずいから話しかけてきてるとかそういうあれか?無理だ。席移動したい。もう帰りたいぐらい無理だ。つーか俺はもともとあんまり女と話す機会がないからか女があんまりすきじゃない。なんか別の生き物な気がするから。
「でも普段は一緒にいることは否定しないんだ?仲良しなんだね」
「そういうんじゃねーけど、腐れ縁だしたまたま、」
「へぇ!腐れ縁なの?いつから一緒にいるの?」
「え、幼稚園から…?たぶん」
「いいなぁ、幼馴染なんて私にはいないから羨ましい!」
「そっすか…」
「柳くんて、私服着てるとイメージちがうね?」
なんで話しかけてくるんだ!?
なんで会話を続けようとしてくるんだ?!
なあ!?なんで?!たのしいか!?
俺と話してなにが楽しいんだ!?
今俺、会話切ったよな!?
そっすか………って、切ったよな!?
わかんねーーー女怖いって、むり、まじむり…!!
「別に普通だろ、シャツにズボンにコート着てるだけだし」
「そんなことないよ、背が高いからかな?すっごくかっこいいよ!」
「そっすか…」
死ぬほど今日、カフェにきたことを後悔してる。帰りてぇ。俺の私服がどうだっていうんだよ、初めて話すような人間に褒められたって嬉しくもないしどうでもいい。おいやめろ、キラキラした目をむけてくんな!
苦手だ!こういうタイプ!
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