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目が覚めたら
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目が覚めたら、俺の腕の中でハナクソが寝息をたてていた。珍しい、俺の方が早く起きるなんて。いつもはハナクソのほうが早く起きて、俺を起こしにくるのに。あ、…そういや今日土曜日か。ぼーっとする頭のまま時計を見ると時刻は朝の10時を回っていた。……腕痺れてる。感覚ない。それでもハナクソの頭を退けようとは思わない。俺も大概気が狂ったな。その顔をじっと見つめる、寝顔、教室で見る寝顔とは全く別の、安心し切った顔。瞼を伏せていると、ほくろが目立つな。いやいや、俺は何をじっと見つめてるんだ。疲れてんのかな、そうかな、そうかも。
「ハーナークーソー。起きろよいい加減、もう10時回ってんだぞコラァ」
ハナクソの肩をぽんぽん、とたたく。ハナクソはもぞもぞと身じろいで、うっすら瞼を開けた。
「…ん、ぅぅ…無理」
もぞもぞ、もぞもぞ、動くだけ動いて、俺の胸にすり寄ってくる。さっきよりますます密着した体、わざとか、わざとなのか、ざけんなクソが。……それよりこいつ、もしかして、寝起き悪いの?
寝起き悪いなら、なんで毎朝俺よりずっと早く起きて、ずっと早く起こしにきてくれるんだろう。…胸が、ズクンと高鳴る、なぁ、おい、お前ってほんとなんなの。
「あったけーー……ゆたんぽ?」
「誰が湯たんぽだよ、巻きついてくんな鬱陶しい!起きろって」
「あーーー、んん、もうちょっと……………………あ?」
ぱちり 突然ハッキリと目を開けたハナクソは顔を上げて俺をみる。そして自分が如何に俺に抱きついてすり寄っているのかを把握したらしく、勢いよく離れるように飛び起きた。なんだよ、忙しいやつだな。
「お、ぁ、あ……近っ!!」
「お前だからな?!俺むしろ被害者!」
「びっ、くりした…すんげー至近距離でお前の匂いすんなーと思ったら本当にお前だった…夢かと思ったぜ…お、おはよ。うわ、もう10時回ってんのかよ、寝すぎた。」
眉間にシワを寄せながら、ごしごしと乱暴に目をこする。寝起きで髪もボサボサ、すげー寝癖なのに、何時もの完璧にキメたセットされた髪型より可愛くみえる気がする。髪がペタンコだ。やっぱこいつ、絶対髪で身長盛ってんだろ、アホにはそれ相応のカッコがお似合いだってことだな。うん。そうだよ。そうだろ。そう思わないとやっていけない。
「あー、今日土曜日か。…ん?土曜日?」
「何一人でブツブツ言ってんだよ、寝起きからうるさいな、ちょっとぐらい静かにできねーの」
「あ!!!!!!!」
「うっさ!!なに!!」
「おま、お前、勉強、してる?」
「あ?なんの話だよ。するわけねーだろ、テストもねーのに。………テスト?」
「そうだよ!月曜日、テストじゃん!忘れてた、やっべぇどうしよ、なんもやってねぇし…っ!」
「俺だってやってねぇよ!おいおいしっかりしろよ委員長…!」
「バッカ野郎!お前も委員長だろーが!一日目なに?現国と、…数学?!は?!もうむり、俺二度寝するわ」
「まてまてコラコラ、なに現実から目を背けてんだよカスかお前は。数学はまあ勉強しなくてもなんとかなるとして、現国…あれヤマ張っても意味ねぇからな…くっそ、捨てるか」
「まてまてコラコラ、お前こそ何現実から目を背けてんの、現国なんか余裕だろ、教科書読んでりゃ点数とれるんだよ。………ワカメくん、」
「なんだよハナクソ野郎話しかけんな、今から俺は精神統一するんだよ帰れ」
「数学教えろ。」
「はい?」
「だから!数学、教え、て、下さい、って…」
背に腹は代えられないからな、とか、なんでこんなワカメに…とかブツブツ言ってるハナクソに、誰が教えてやりたいと思うんだろう。
「見返りは新作ゲームな」
「ざっけんな金の亡者め、だからテメーはワカメなんだよ!」
「んだとコラ!そんな態度で教えてやるほど俺は優しくねぇぞ!」
「はぁ?いいのかよ、俺が赤点とって追試で居残りの一週間をすごしてもいいわけ?!一緒に帰れねぇんだぞコラ!」
「…………は?お前、俺と一緒に帰るために追試回避してーの?」
「ッ、ち、がう!…いや、違わない、か?だってお前俺の足だし」
「素直じゃねェな!ほんっと可愛くねぇお前、ほんっと可愛くねぇー!」
照れ隠しだってことは分かってる。なんせハナクソの耳が赤い。こいつ、顔色は変えないくせに耳はすげー素直、バカじゃね。バレバレだし。つーかバカじゃね?!俺だよバカは!こんなことで、いちいち嬉しくなって、なんで、…あーー!俺は、ほんっと甘いなぁ!
「お前、髪伸ばせば」
ハナクソの耳に触れながら、髪を耳にかけてやる。さっきよりあらわになった赤い耳、目立つ。手のひらが頬に当たるようにぴっとりくっつけると、ハナクソはびっくりした顔をした。
「なんでこの流れでそんな話になんの」
「お前の耳が赤いからだけど」
「はぁ…?!お前それ、多分目に異常あるわ、病院オススメします。」
ばしっ。手を払われる。ふいっと顔をそらしたハナクソの耳はやっぱり赤い、さっきよりずっと赤い。じわじわと頬も染まっていってる気がする、なんか俺まで恥ずかしくなるからほんとヤメテ。
そんな、可愛くねぇけど、まぁちょっとぐらい可愛いかもしれないことすんなよ、ちょっとだけだぞ、ちょっとだけ。だから簡単に惚れられるんだろ、無自覚か、自覚アリか、どっちにしろクッソタチ悪ィよ。耳丸出しになるような髪型にしやがってこの野郎、その髪型なんなの、流行りに乗っかってるつもりなの、髪色変だぞお前、なんで灰色なんだよ、髪キシキシになるんじゃねーの。将来ハゲろ、そして苦しめ。
「……髪、長いほうが好き?」
「あん?…や、別になんでもいいけど。でも耳出てたら、俺にすぐ気づかれんぞ、お前の照れ隠し」
「ふーん、じゃあいいじゃん。普段素直になれねーんだから、頑張って察して」
…死んでくれないかなこいつ本当に。
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