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彼らが胸の底のここには…①
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夏の大会を勝ち進んでいた ある日、いつもなら練習が終わると「球を受けて下さい」と迫ってくる降谷が、そそくさと上がろうとする。
「お疲れさまです。御幸先パイ」
「? お前、どっか悪いの?」
不思議に思った御幸が尋ねると、
「別に」
つーん、というオーラを出しながら
「今日は用事が」
と、降谷が続ける。
「お前がピッチングより優先させる用事って、すげぇな!」
と、御幸が からかうと、
「マッサージを…」
ぼそり、と答える。
「あ?お前、マッサージ受けんの?生意気」
「ぼくじゃなくて…純さん…」
愛しい人の名が不意に出てきて、御幸は ギョッとなる。
「純さん?!」
(何で降谷から、純さんの名前が……ああ、そうか)
「そう言えば お前、前に純さんのマッサージしてたっけ。また頼まれたのか」
「いえ。志願しました」
「なんで志願してんだよっ」
御幸が、プレイ中に掛けているスポーツグラス越しにギッと降谷を見やれば、ほんのりと顔を赤らめ
俯く。
(え?ナニ?どういうことっ?
…そう言えば この間、何気に怪しい雰囲気だったっけ?!)
不意打ちに御幸が 狼狽えていると、
「純さんの」
降谷がポツリと言う。
(…てか、コイツ、いつから"純さん"て呼んでんだよっ
“伊佐敷先パイ”だろ、普通。
いや、百歩 譲って “伊佐敷さん” だ。
“純さん”なんて気易く呼ぶなっ)
と、腹の中で毒づきながら、御幸は降谷の言葉を待つ。
「声を、もっと、聞いていたいので…」
「…声?」
「マウンドで 純さんの声が聞こえると、安心するので…」
ハッと思い、降谷の顔を見る。マウンドにいる時を思い出しているのか、少し嬉しそうに見える。
(無表情な こいつが…
まずい。
いや、純さんの声で安心するのは分かる。
ぶっ殺せ!だの物騒な事を言うけど、あの声で力づけられるのは 確かだ。
それは良いんだけど、降谷、おまえっ…)
「オ、オレも行くわ」
下心みえみえ(と、御幸には思える)の降谷と、
純さんを、そう簡単に近づけてなるものか。
ましてやマッサージだと?! 許せん!
と ばかりに御幸が言う。
「? 何で御幸先パイも?」
「えっ…?ほら、オレ、キャッチャーだし?お前の女房役っていうか、ま、純さんに無理を言われないように?」
やたらと饒舌になる御幸を降谷が じっと見る。
(やばい。怪しまれたかな…
いや、怪しいよな、オレ)
「と、とにかく、ほら、純さん待ってんだろ、早く行こうぜ!ほらほら!」
内心の動揺を隠すように、降谷の背中を押し、
純の部屋へ向かう。
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