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冷たい残響 ① 御幸×純さん※R18
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その日、青道高校野球部寮の食堂には、祝いの料理が用意されていた。
全国高校野球選手権大会西東京地区予選決勝、
つまり、西東京地区の夏の甲子園出場を賭けた決勝戦が、本日 行われた。
青道高校 対 稲城実業高校
9回裏2死まで1点差でリードしていた青道高校の優勝を、大方の人は疑わなかっただろう。
しかし、
逆転を許した。
サヨナラ負けを喫し、優勝を逃した。
敗戦に打ちひしがれた選手逹、特に3年生逹は 涙にくれ、用意された祝賀会用の食事に 手を付ける事さえなかった。
形ばかりの慰労会が済み、1・2年生は、そそくさと それぞれの部屋に戻る。
3年生逹の重苦しい空気に耐えられそうもない。
本日ばかりは自主練も憚られる…
残された3年生も、1人、また1人と部屋に戻っていく。
下級生と同室なので、気を遣わせてしまうだろうが
仕方ない。
他の部員が全員 去ったにも関わらず、伊佐敷純は
まだ座っていた。
俯いて。涙にくれて。
ー ー最後の打球、あの成宮の打球、
何故オレは捕れなかったんだ?
届かなかったんだ ?!ーー
センターを守る純の頭上を越えて、グラウンドに
落ちたボール。
ピッチャーとは言え、稲実の成宮 鳴は5番を打つ好打者だ。
救援の川上の球を うまく捉えられた。完全なヒットである。
ただ、純の頭上を越えて行った。それが許せない。
打った成宮も許せない。
が、それ以上に、捕れなかった自分に、
届かなかった自分に 腹が立つ。許せない。
エラーではない。
…………分かってる。
完全なヒットだ。
…………分かってる。
ーー それでもオレが、センターのオレが、
追い付ければ、負けなかったかも知れない。
延長戦に入れば不利ではあっても、
負けなかったかも知れない ! ーー
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