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〃 ⑧
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御幸は、まくし立てる純の顔を見て考える。
( 純さん、何言ってんだろ。
オレが純さんを好きなのは絶対だし。
離れたって好きでいるのに変わる訳ないし。
他のヤツと?……有り得ないし!)
純が、御幸の不思議そうな顔に向かって、
息を吸ってキッパリと告げる。
「だから、御幸。だから、さよならだ!」
「え?」
突然 飛び出した別れの言葉に、御幸は息をのむ。
「さよならだ、って言ってんだよ。
何 聞いてたんだ、お前?
……じゃあな、あばよ」
純は言いたい事を言って清々しそうにニカリと笑う。
卒業証書の入った筒を肩に、さながらバットを担ぐように。
そのまま、ユニフォームを着てグラウンドに駆け出して行きそうだ。
そんな純の姿を見て、御幸は、胸が締めつけられるような せつなさを感じた。
( 純さんは前を見ている…先の世界を見据えている。
じゃあ……じゃあ、オレは…?)
さよなら、と言われて動揺している自分がいる。
しかし、どこかで ほっとしている自分も、いる。
すべてを終わらせる “ さよなら ” では なく、
次の期待で胸が膨らむような “ さよなら ” を言ってくれる ひと。
( オレも、前に進まないと いけない……?
いつだって前を向いていたつもりだったけど…
純さんしか見えなくなっていた…?
…だって、好きな人が居なくなっちまうなら、
それまで一緒に いたいだろ……?
それまで、なのか。
その後のコトまで、今は考えてる場合じゃない、
ってコトなのか……?)
頭の中で思いを巡らせている御幸を、
純が目を細めて見つめている。
(悪いな、御幸。ちゃんと振ってやれねぇで。
オレ達の1年なんて、短いようで結構 長い。
日々が凝縮していて濃い1年なら、お前はオレの事なんか忘れちまうだろう。
……卑怯なやり方だが、他に思いつかねぇ。
お前が、もし、オレを信じるに値すると思うなら、
オレの言葉をそっと心にしまってくれ……)
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