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模擬店の準備
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俺は唇を軽く噛んだ後、何事もなかったように和久に話題を振ろうと視線を上げた瞬間女子と話している香坂と一瞬だけ目が合った。
「っつ……」
一瞬だけだったが、香坂の俺を見る目が笑っていなく夢で見たような咎めるような視線を感じて咄嗟に目を逸らした。
目を逸らして見間違いだと頭の中で思っても思い出したくないあの夢が……あの声がグルグルと回り続ける。
俺は、バクバクと痛いくらい鼓動する心臓を落ち着かせながら、夢の事を忘れられるようにぎゅっと手を握りしめていると正面から肩を叩かれた。
動揺しているのを隠すように一回小さく深呼吸して目線を正面にやると、女子と話していた筈の香坂が心配そうに此方を見ていた。
「こ……香坂っ」
俺は、和久が肩を叩いてきたと思って顔を上げたらまさか香坂だとは思わず少しだけ体を引いてしまった。
香坂は、俺が体を引いた事に気づいたのか悲しそうな表情を浮かべ此方をみた。
悲しそうな表情の香坂には、恐怖は微塵も感じられなくてただ申し訳なくなってくる。もしかしたら、ただの俺の見間違いだったのかもしれない。
俺は、見間違いであって欲しいと心から願って謝ろうと声をかけようとしたら先に香坂が口を開いた。
「……里中本当に大丈夫? やっぱり顔色悪い」
「あ……あぁ。変な夢見てさ寝不足なんだ」
「どんな夢?」
俺は、心配そうな香坂の問いにどう答えたら良いのか分からず、戸惑っていると“バン!!”と廊下全体に響き渡る程の音を立てて教室の扉が開いた。
扉の音で、香坂や他のクラスの人まで扉に釘付けになっている。
俺は、とりあえず夢の事を答えずに済んでホッとしてると、けたたましい怒鳴り声が廊下に響いた。
「ちょっと!! 何時まで廊下でキャーキャー言ってんのよ!! 早く準備手伝いなさい!!」
そう怒鳴り声を上げながら、扉の前で腕を組んでいるのは学級委員長の【林 夏美】だ。
林は、活発で真面目で頼れる学級委員長で文化祭委員でもある。
見た目は、学級委員長に良く居そうなセミロングの黒髪に眼鏡という見た目だが、性格は見た目の印象とは真逆でとても気が強く男っぽいせいか、クラスの皆には慕われて恐れられている。
林は、廊下で話していた俺達にかなり怒っているのかジロリと此方を凄い勢いで睨み付けている。
林の後ろでは、クラスメイト達がもう既に多く集まっていて皆作業をしながら苦笑いを浮かべて此方を見ている。
多分だが、林は作業をしているクラスメイトの為に俺達を注意しに来たんだと思う。
「林さんごめん。今すぐ手伝う。ほら皆も行こう」
「うん! 行く!」
「私もー!」
そんな林と苦笑いしているクラスメイト達を見て、香坂は言い訳もせずに謝ると、俺を一回心配そうに見てから取り巻きの女子を引き連れてクラスへと入っていった。
「本当に人気者は大変そうよね。ほら、里中と坂上も早く入って手伝って」
林は、香坂へ嫌みを呟くと俺達の方を見て教室に入って行った。
俺は、心配そうだった香坂に心の中で謝りながらもホッとしていると和久に肩を叩かれた。
「司。早く行かないと林にまた怒られそうだから行くぞ」
「……そうだな」
俺は、香坂の事が頭から追い払うと和久に返事をして教室へ入った。
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