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連理之枝-れんりのえだ- <5>
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そのまま無言のまま寝室へ歩き出す。
トボトボ歩く覚流にペースを合わせているため、その足取りはかなりゆっくりだ。
寝室の前まで来ると、榊は覚流を先に中に入れる。
無意識にベッドを視界に入れてしまった覚流のトボトボ動いていた足は、とうとう止まった。
「……」
立ち止まった彼を、後ろから入ってきた榊が後ろから気を遣うよつにやんわりと抱きしめる。
「……やっぱお前すげーキツそうだから今日はやめるわ」
チュッ、とわざとらしく音を立ててキスをして彼を解放する。
「……ぇ……とし……」
「お前が気分が乗らん時にやっても、お前がきついだけだからな」
いつもよりずっと穏やかな、自分を落ち着かせるような声を聞かせてくれた。
覚流は充血した目でふるふると首を力なく横に振るが、身を屈めた榊の優しいキスが目に降ってきた。
「無理してんじゃねえよ……」
そして、向かい合うように立ってから落ち続ける涙をぺろりと舌先で舐め取って、瞼にキス。
もう片方の目から落ち続ける涙も舐め取って、キス。
それを何度か繰り返してから、榊は覚流をベッドにゆっくりと座らせることができた。
「お前がキツい思いする必要はねえんだ。今日はお前のが疲れてんだからゆっくり休めよ」
ただ榊は隣に腰掛けて覚流のいたるところに触れるだけのキスをしているだけ。
身体を撫でたり、服を脱がそうとしたりなど、それ以上の行為をしようとはしない。
こういう時の榊はどこまでも紳士的で、覚流の心が逆に切なくなるくらい気を遣う。
次第にそのキスで落ち着いてきたのか彼の涙は次第に少なくなり、やがて止まった。
頬を静かに撫でながら、榊は囁く。
「涙、止まったな」
その声に覚流は小さく頷いた。
「沸かしてくれたけど風呂見てくるから少し横になってろ。戻ってきたらもうどこにも行かねえからゆっくり休め」
頭を撫でながら告げるが、覚流は首を横に振るだけ。そして、榊の服を軽く指でつまむように握った。
「さか、き……さん……」
「お? なんした?」
「あの……行かないで……」
掠れた声が寂しそうに感じた。
「お願い……、そばに……一緒にいさせて……ください」
その声に榊の胸が締め付けられるような苦しさを彼に伝える。
それがなぜか耐えられなくて、榊はふわりと覚流の身体を抱き寄せた。
「っ!?」
「俺はお前に無理される方がキツいんだがな……」
頭を撫でなから「覚流……」と自然と耳に吐息をかけてしまいながら彼の名を囁いた。
「……っぁん!!」
身体を一瞬強ばらせながら悲鳴じみた声をあげる。
「あの、……あ、あの……俺……とし……が……敏樹……あの……」
その後は思うような言葉が出てこなくて口を閉ざす。それがぼんやりした頭で聞こえていて、更に心が切なくなった。
だが、その切なさを簡単に取り払うのは榊だった。
「俺が、どうした?」
凭れかかるように覚流の重さを受け止めるように抱き寄せて、榊は頭を撫でてくれた。
「お前のペースで構わねえから、言ってみろよ」
抱きしめながら榊は唇にキスを落とす。
「……て……、……い」
「ん? すまん、もう一度……」
「教えて……ほしい……」
「教える……? 何をだ?」
しばらく泣き過ぎて目を真っ赤にしながら心配そうに榊を見つめる。
「あなたが……俺だけのものなんだって……今度は、今度は絶対忘れないように……、身体に……」
本当に小さな声だった。しかし、目に涙をためて懇願するその声は、耳を澄ませて覚流の言葉を聞き洩らさないようにしようとする榊に届くには十分な大きさだった。
榊は「俺は構わねえが、お前は大丈夫なのか……?」と甘いキスをくれる。
「……今は、敏樹を感じたくて、……たまらない……」
観念したような小さな声をあげて、また俯く。
「だから……、俺を……抱いて……」
「覚流……」
そのまま仰向けに寝かせると、彼の柔らかい黒髪が枕に広がる。
ぼんやりと働かない頭で一生懸命考えて導き出した答えなのだと榊は悟り。
「……了解、相棒」
榊の穏やかで静かな視線に晒されて、覚流は急に顔を赤くして背けるしかできなかった。
「どした?」
着ていた服に手を掛けると、掠れた声で「……恥ずかし い……」と目を伏せる。
「恥ずかしがることなんかねえよ。いつもみたいにしてりゃいい」
抱き抱えるように腕を回し、額にキスを落とす。
「お前は俺のことになると必要ねえのに必要以上に我慢するからな」
神経質すぎるんだ、お前は。
そう囁きながら今度は鼻の頭にキス。
今までも、そしてこれからも告げる気がなかったことを囁くと、案の定覚流は一つだけ首を横に振った。
「違うのか?」
「我慢……して……ない……」
だんだんと消えていくような声を榊に聞かせると、榊は覚流の手を取った。
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