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その朝、俺と智也は朝早くに起きた。
そして最近では初めて俺に
「朝飯作って」
と頼んだ。
こんなのズルいと思う。
最後。
俺はこれを最後にしたいのに、最後の最後に、俺を喜ばせるような事をするから。
誕生日おめでとうなんて言葉はないけど、それでも俺にとって、智也が俺の作ったものを食べたがるのは、すごく嬉しい事なんだ。
でも丁度いいのかもしれない。
最後の最後は、嫌な思い出にならなそうだから。
「何がいい?パン?ご飯?」
「なんでも………あぁ、パンでいいよ。」
覚えてたからなのかな?
俺らが初めて同居した時、初めての朝、俺は同じ事を聞いた。
その時智也は「なんでもいい」って答えたんだけど、俺が「なんでもいいって一番大変なんだから」って言ったら次の日からはちゃんと何が食べたいかリクエストしてきた。
今思うと俺も我儘だったな。
なんでもいいって多分本人は本当になんでもいいんだろうけど、なんでもいいは作るに作れないし。
トースト二枚、サラダ、ヨーグルトにコーヒー。
最近では豪華すぎる朝飯でも、今日は…今日で…最後だから。
「車で行くの?」
最後だから、今日はいつもよりうざくてもいいかもしれない。
嫌いになられても俺はもうどうでもいい。
どうでもいいんだ。
「いや、車じゃ遠すぎるだろ」
「そうだね」
「…」
「あのさ」
「ん?」
「気を付けてね」
そう言って智也が何故か驚いた顔をして俺を見た。
「お前……」
どうやら泣いていたらしい。
涙が、次から次へと溢れ出て…
でもこんな、こんな最後は嫌だから…
泣きたくないから
「痛っ!」
「は?」
「ちょっとコンタクトずれて!」
こんな子供みたいな…ベタな言い訳も、多分今の智也なら信じてくれるだろう。
コンタクト…なんかしてないけど。
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