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行かない…で?
そんなの…俺が言う事じゃない…じゃん。
だって居なくなるのは、俺なんだから。
逃げるのは俺。
終わらせるのは俺。
全部、俺が俺の意思でやるのに、どうして行って欲しくないんだ…
智也が、行かなかったら…俺はどうするんだ?
我慢はもう嫌だ。
愛されないのも嫌だ。
一人だけ傷付くのももう嫌だ。
だから別れるんだろ?
だから俺はここから離れるんだろ?
なのに、どうしてこんなにも胸が痛いんだ。
そんなに智也と一緒にいたいのか?
自分を殺してまで一緒にいる必要があるのか?
違うだろ。
幸せを潰してまで苦しまなくていいように…
智也じゃダメだったから。
智也を最後まで好きでいたいから。
嫌いになりたくないから。
だから、終らせるんだろ…
だから…
俺は間違ってないはずだ。
智也が部屋から出てきて、玄関へと歩いて行った。
靴を履き、荷物を持って、立ち上がった。
俺は智也の後ろ姿を、なんとも言えない気持ちのまま見つめていた。
本当に、最後なんだな。
後ろ姿も、最後なんだなあ…
「じゃ、行くわ」
(最後…だから)
「うん。行ってらっしゃい」
(最後なんだから)
そのまま玄関のドアに触れた智也の背中に抱きついた。
(最後だ)
「ちょっ…なに?」
最後に聴く声はうざそうな、迷惑そうな、困った声。
それでもいい。
この体温、匂い、すべて忘れる前に、感じておきたい。
次、もし会うことがあったら、その時はもう、今までの全部がただの思い出になってるから。
思い出せないかもしれないから。
「愛してるよ」
最後には伝えておきたかった。
俺がお前を愛していたって事を。
智也の腰から腕を離して、いつのまにか泣いていたらしい、泣き顔を見られないように下を向いて、智也の横からドアを開けた。
「ほら、遅れるよ」
と、できるだけ普通の声で言い放った。
声は、震えてない。
うん。
いつも通りだ。
「……ああ」
それが、最後の返事なんだな。
そして部屋から出て行き、ドアが自動的に閉まる寸前に、智也が振り向いた……気がした。
涙で視界がぼやけていて、表情もなにも見えない智也の顔が、俺が見た最後の智也の顔だった。
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